2026年は、憲法改正の議論だけでなく、将来の国民投票を実施するための制度整備にも動きがありました。
特に注目したいのが、2026年7月31日に公布された「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律」(令和8年法律第73号)です。
2026年の主な動き| 時期 | 出来事 | 内容・意味 |
|---|---|---|
| 2026年4月 | 緊急事態条項の集中討議 | 緊急時の国会機能などを議論 |
| 2026年5月 | 緊急事態条項・憲法9条など | 改正に関する論点を整理 |
| 2026年6月19日 | 衆議院で国民投票法改正案を可決 | 投票環境整備に関する法案 |
| 2026年7月24日 | 参議院で同法案を可決 | 両院で成立 |
| 2026年7月31日 | 改正法を公布 | 令和8年法律第73号 |
| 2026年10月29日 | 衆議院憲法審査会 | 国民投票広報協議会の関係規程を討議 |
| 2026年10月31日 | 改正法の施行 | 投票・開票環境などの整備 |
今回の法改正は、憲法の条文そのものを変更するものではありません。
国民投票を実施するときの投票環境や広報手段を整えるための改正です。
主な変更点は3つあります。
1.開票立会人の選任要件を緩和
これまでより広い範囲から開票立会人を選任できるようになります。悪天候や離島などの事情で開票所の設置に変更が生じた場合にも、開票体制を確保しやすくする狙いがあります。
2.投票立会人の選任要件を緩和
投票所を設置・運営する自治体が、投票立会人を確保しやすくするため、選任対象を広げます。
3.FM放送による広報を追加
これまでAM放送の設備を使用することとされていた憲法改正案の広報放送について、FM放送の設備も利用できるようになります。
放送事業者のAM放送からFM放送への転換に対応する制度整備です。
この改正法は、7月31日の公布から3か月を経過した2026年10月31日に施行されます。10月30日時点では施行前日です。
なお、今回の改正で変わるのは投票・開票の実務や広報手段です。憲法改正に必要な国会の3分の2以上の賛成、18歳以上の投票資格、国民投票の過半数という基本条件が変更されるわけではありません。
2026年10月29日の憲法審査会では何が議論された?衆議院憲法審査会の公式会議日誌によると、2026年10月29日の第222回国会第2回審査会では、国民投票広報協議会の関係諸規程が議題になりました。
衆議院法制局から説明を受けた後、委員による討議が行われています。
また、同年の国会では、緊急事態条項、憲法9条、合区や地方公共団体のあり方などについても集中討議が行われてきました。
ここで押さえておきたいのは、憲法審査会での議論と憲法改正の正式な国会発議は別物だという点です。
国民投票の広報制度を整備することや、憲法9条について意見を交わすことは、憲法改正原案が両院で可決されたことを意味しません。
2026年の注目点は、憲法改正の具体的な議論と、実際に国民投票を行うための制度整備が並行して進んでいることです。
【プロの結論】憲法改正の流れで絶対に押さえたい3つの判断基準

憲法改正のニュースを正確に理解するには、単に「改憲に賛成する議員が多いか」という政治的な勢力図だけを見ても十分ではありません。
手続のどの段階にあるのかを確認が必要です。
判断基準1:原案提出と国会発議を混同しない衆議院議員100人以上、参議院議員50人以上という数字は、議員が憲法改正原案を提出する際の要件です。
一方、実際に国会発議するには、衆議院と参議院それぞれの総議員の3分の2以上の賛成が必要です。
この2つを混同すると、改正案が成立する可能性を実際より高く評価してしまいます。
判断基準2:憲法審査会の議論だけで改正が決まるわけではない憲法審査会での討議や委員の賛成意見は、改正に向けた政治的な動きを把握する材料になります。
しかし、最終的な決定には両議院の本会議での採決が必要です。
ニュースを見るときは、審査会での議論なのか、原案提出なのか、本会議での可決なのかを区別することが大切です。
判断基準3:最終的な決定権は国民投票にある国会で3分の2以上の賛成を得ても、国民投票で過半数の賛成を得られなければ憲法改正は実現しません。
国民投票では、改正案の条文だけでなく、賛成・反対双方の主張、改正によって生じる法的な影響、国民生活への影響を確認する必要があります。
憲法改正は、単なる政党間の政策競争ではありません。国家の基本ルールを変更するための手続であり、国民が最終判断を担う制度です。
【憲法改正の流れ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:憲法改正には衆議院と参議院の両方で3分の2以上の賛成が必要ですか?
A1:はい。日本国憲法第96条により、衆議院と参議院それぞれの総議員の3分の2以上の賛成が必要です。片方の議院だけで可決しても、国会発議には進めません。
Q2:憲法改正の国民投票は何歳から参加できますか?
A2:満18歳以上の日本国民が投票できます。憲法改正国民投票法第3条に定められています。
Q3:国会発議から国民投票までは何日かかりますか?
A3:発議した日から起算して60日以後180日以内です。その期間内で国会が投票日を議決します。
Q4:国民投票で賛成票が過半数を超えたら、誰が憲法を公布しますか?
A4:天皇が国民の名で公布します。日本国憲法第96条第2項に定められた手続です。
Q5:憲法審査会で改正案が議論されると、すぐに憲法が変わるのですか?
A5:いいえ。憲法審査会の議論は審査・調査の段階です。その後、両議院の本会議で総議員の3分の2以上の賛成を得て国会発議し、国民投票で承認される必要があります。
憲法改正は、原案の作成から公布まで、国会と国民が段階的に判断する仕組みになっています。
全体の流れを改めて整理すると、次のとおりです。
1. 憲法改正原案の作成・提出:議員発議の場合は衆議院100人以上、参議院50人以上の賛成が必要。
2. 衆議院憲法審査会で審査:改正案の内容を調査・審議し、公聴会などを実施。
3. 衆議院本会議で可決:総議員の3分の2以上の賛成を得る。
4. 参議院憲法審査会で審査:衆議院から送られた改正案を審査。
5. 参議院本会議で可決:総議員の3分の2以上の賛成を得る。
6. 国会発議・国民投票:発議後60日以後180日以内に国民投票を実施し、賛成票が投票総数の過半数を超える。
7. 公布:天皇が国民の名で憲法改正を公布する。
2026年は、国民投票法の改正によって投票環境の整備が進み、憲法審査会でも緊急事態条項や憲法9条などの議論が続いています。
今後のニュースを追う際には、政治家の発言や審査会での議論だけでなく、実際に憲法改正原案が提出されたのか、両院で可決されたのか、国会発議に至ったのかという手続上の進展を確認が必要です。
憲法改正の最終的な決定権は国民にあります。 国会の3分の2以上の賛成と、国民投票の過半数という2つの条件を理解することが、2026年以降の憲法改正論議を正しく読み解くための基本になります。