2016年9月、横浜市神奈川区の旧大口病院で、入院患者の点滴に消毒液が混入され、3人が中毒死するという衝撃的な事件が発覚しました。事件を起こしたのは、当時この病院に勤務していた元看護師・久保木愛弓です。警察の捜査によって、3件の殺人と5件の殺人予備が立件され、検察側は死刑を求刑しましたが、2021年の横浜地裁、2024年の東京高裁はいずれも無期懲役を言い渡しました。
さらに事件を複雑にしているのが、発覚前の約3か月間に48人の入院患者が死亡していたという事実です。なぜ48人全員が事件の被害者として立件されなかったのか。久保木愛弓の犯行動機は何だったのか。そして、2026年現在、本人と旧大口病院はどうなっているのでしょうか。裁判所の判決内容と横浜市の公表資料を軸に、事件発覚から無期懲役確定までを整理します。
【事件の全体像】大口病院事件とは?点滴中毒死で3人が犠牲に

大口病院事件は、正式には大口病院連続点滴中毒死事件などと呼ばれる刑事事件です。事件現場となったのは、神奈川県横浜市神奈川区大口通にあった医療法人財団慈昭会の大口病院でした。
当時、同病院の病棟では高齢の患者が相次いで死亡していました。2016年9月20日、4階病棟に入院していた八巻信雄さん(当時88歳)が死亡した際、看護師が投与中の点滴に異常を発見します。点滴の状態に不審な点があったことから調査が進み、薬物による中毒死の可能性が浮上しました。
その後、9月18日に死亡した別の患者についても同様の中毒死だったことが判明。神奈川県警による捜査が本格化し、病院内で何者かが点滴に異物を混入した疑いが強まりました。
混入されていた消毒液「ヂアミトール」とは事件で使用されたのは、消毒薬の一種であるヂアミトールです。有効成分は塩化ベンザルコニウムで、裁判所の認定によると、被害者3人はいずれもベンザルコニウム中毒によって死亡しました。
通常、消毒薬は医療現場の衛生管理に使用されるものです。しかし、医療従事者が管理する薬剤や点滴が不正に扱われれば、患者の生命を直接脅かす危険があります。
この事件が特に深刻だったのは、患者や家族が医療従事者を信頼して治療を受けている病院内部で、看護師の立場を利用した犯行が行われたことです。加えて、混入された点滴の一部は、犯行を知らない別の看護師によって患者に投与されていました。
殺害された3人の患者刑事裁判で殺人の被害者として認定されたのは、次の3人です。
- 興津朝江さん(当時78歳):2016年9月16日に死亡。終末期の患者ではなく、治療が終われば退院して通常の生活に戻る見込みがあったと裁判所は認定した。
- 西川惣蔵さん(当時88歳):2016年9月18日に死亡。終末期の医療を受けていた患者の一人。
- 八巻信雄さん(当時88歳):2016年9月20日に死亡。点滴の異常が発見され、事件発覚のきっかけとなった患者。
特に重要なのは、3人全員が終末期の患者だったわけではないという点です。裁判所は、興津さんについて、治療後に退院して従来の生活を送る可能性があったと認定しています。
つまり、この事件は単に終末期医療の現場で発生した問題ではありません。回復の可能性があった患者まで犠牲になっており、被害の重大性は極めて高いものでした。
【事件の経緯と関係者】2016年の発覚から2018年の逮捕、2024年の判決確定まで
事件発覚から逮捕までには約1年10か月を要しました。その後の裁判も、責任能力や死刑の適用をめぐって長期間にわたり争われています。
横浜市の公表資料、警察・検察の捜査経過、裁判所の判決記録を整理すると、主要な出来事は次のとおりです。
| 時期 | 主体・関係者 | 出来事と位置づけ |
|---|---|---|
| 2016年7〜9月 | 旧大口病院 | 約3か月間に入院患者48人が死亡したと報道される。 |
| 2016年9月16日 | 興津朝江さん | 点滴に消毒液を混入されたことによる中毒死。 |
| 2016年9月18日 | 西川惣藏さん | 同様の中毒によって死亡。 |
| 2016年9月20日 | 八巻信雄さん | 死亡。点滴の異常が発見され、事件発覚につながる。 |
| 2016年9月23日 | 神奈川県警 | 点滴への異物混入による中毒死事件として発表。 |
| 2017年 | 病院運営法人 | 大口病院から横浜はじめ病院へ名称変更。 |
| 2018年7月7日 | 神奈川県警・久保木愛弓 | 西川さんに対する殺人容疑で逮捕。 |
| 2018年7〜8月 | 神奈川県警 | 八巻さん、興津さんに対する殺人容疑で相次いで再逮捕。 |
| 2018年12月7日 | 横浜地方検察庁 | 殺人3件、殺人予備5件で起訴。 |
| 2021年11月9日 | 横浜地方裁判所 | 死刑求刑に対して無期懲役判決。 |
| 2023年12月15日 | 東京高等裁判所 | 控訴審の初公判。 |
| 2024年6月19日 | 東京高等裁判所 | 検察側・弁護側双方の控訴を棄却し、無期懲役を維持。 |
| 2024年7月 | 検察側・弁護側 | 双方が上告せず、無期懲役が確定。 |
横浜市が2016年12月に公表した健康福祉・医療委員会の資料には、事件発覚前から病院に関する複数の情報提供が寄せられていたことが記録されています。
その内容には、看護師のエプロンが切り裂かれたこと、飲み物に漂白剤のようなものが混入された疑い、カルテの紛失などが含まれていました。
横浜市が行った9月2日の定期立入検査では、エプロンの切り裂きに近い事実や、飲み物への異物混入に近い事実が確認されました。ただし、飲み物については被害がなかったとされ、タイムカードの人数合わせや議事録捏造については、そのような事実はないと整理されています。
事件後の10月11日には臨時立入検査が実施され、薬剤管理、夜間勤務体制、ナースステーションの運用、患者の安全対策などが確認されました。
この記録から分かるのは、点滴中毒死だけが突然起きたわけではなく、事件前から院内の安全管理に関わる問題が複数報告されていたということです。一方、それらすべてが久保木被告の犯行だったと司法的に認定されたわけではありません。
【大口病院の不審死48人】なぜ48人全員が殺人事件として立件されなかったのか
大口病院事件を調べる際、多くの人が疑問に感じるのが「48人もの患者が死亡していたのに、なぜ殺人として認定されたのは3人だけなのか」という点です。
事件発覚前の2016年7月から9月にかけて、同病院では入院患者48人が死亡していたと報じられています。事件発覚後、この数字は大きな注目を集め、48人全員が同じ犯人によって殺害されたのではないかという疑念も広がりました。
48人の死亡と3件の殺人は別の数字ここで区別しなければならないのは、病院で死亡した患者の総数と、刑事裁判で殺人が証明された人数です。
- 48人:2016年7月から9月の約3か月間に旧大口病院で死亡した入院患者の人数として報じられた数字。
- 3人:久保木被告による殺人として起訴され、裁判所が認定した被害者数。
- 5件:別の患者への殺害を目的とした点滴などへの混入について認定された殺人予備。
48人という数字は、すべての死亡について殺人が証明されたことを意味しません。入院患者の中には高齢者や重い病気を抱える人もおり、死亡原因を個別に検証する必要がありました。
未解明の死亡事例と、起訴できなかった理由捜査では、起訴された3人以外にも、消毒液との関係が疑われた死亡事例がありました。しかし、死亡原因だけでなく、薬物がどのように体内に入ったのか、誰が関与したのかといった点まで証拠によって裏付ける必要があります。
報道によると、別の男性患者についても殺人容疑で捜査され、検察に送られましたが、薬物が体内に入った経路を十分に解明できず、不起訴となりました。
また、久保木被告の捜査段階での供述には、起訴された3人以外の患者に対する行為を示唆する内容があったと報じられています。しかし、供述があったことと、その犯罪が証拠によって立証されたことは同じではありません。
東京高裁も未起訴の余罪を慎重に扱ったこの問題は控訴審でも争われました。
検察側は、起訴されていない複数の殺人に関する供述調書を証拠として採用するよう求めました。これに対し、東京高裁は、未起訴の犯罪に関する詳細な供述を量刑に持ち込むことで、裁判所に不当な偏見を与えたり、争点を混乱させたりするおそれがあると判断しました。
そのため、一審が関連する供述調書を採用しなかった判断を支持しています。
これは被告人を擁護するという単純な話ではありません。刑事裁判では、立証された犯罪について処罰するという原則があり、疑いだけで別の殺人まで有罪と認定することはできないのです。
「48人が死亡した」という事実と「久保木被告が48人を殺害した」という主張は、明確に区別する必要があります。この違いこそ、大口病院事件を理解するうえで最も要点の一つです。
【久保木愛弓の犯行動機】なぜ患者を殺害したのか?公判で明らかになった心理
久保木愛弓の犯行動機は、裁判で大きな争点になりました。
検察側と裁判所の認定によると、久保木被告は患者が自分の勤務時間中に死亡した場合、家族への説明や対応を求められることを強く恐れていました。その負担を避けるため、患者が自分の勤務時間外に死亡するように犯行を繰り返したとされています。
患者の死亡後に遺族から責められることへの恐怖東京高裁の判決には、久保木被告が以前勤務していた病院で、患者の急変時の処置や家族への説明がうまくできず、家族から責められてつらい思いをしていたことが記されています。
その後、旧大口病院でも、患者が急変して死亡し、家族が臨終に間に合わなかったことから、看護師が激しく責められる場面を目撃したとされています。
こうした経験によって、患者が自分の勤務時間中に亡くなれば、自分も同じように責められるのではないかという恐怖が強まっていきました。
3人それぞれに対する犯行動機東京高裁の判決は、3人の殺害について、犯行に至る事情を個別に整理しています。
興津さんの場合は、患者が無断外出したことによって、自分が責められる可能性を減らそうとしたことが動機として認定されました。
西川さんの場合は、日勤の看護師が勤務している時間帯に患者が死亡すれば、遺族への対応をその看護師に担当してもらえる、あるいは少なくとも負担を分担してもらえると考えたと認定されています。
八巻さんの場合は、次の自分の夜勤が始まるまでに患者が死亡すれば、家族への対応を自分がしなくて済むと考えたことが動機でした。
つまり、3人の犯行には共通して、自分が患者の死亡に伴う対応を避けたいという自己中心的な目的がありました。
自閉スペクトラム症の特性やうつ状態はどう影響したのか裁判では、久保木被告の精神状態についても詳しく検討されました。
裁判所は、被告人に自閉スペクトラム症(ASD)の特性があり、犯行当時はうつ状態にあったと認めています。
具体的には、複数のことを同時に処理することが苦手で、対人関係への対応力や問題解決の視野に課題があったことが指摘されました。また、看護師として臨機応変な対応を求められる仕事との適性にも問題があったと評価されています。
被告人自身も看護師としての適性に不安を感じ、退職を考えたものの決断できず、仕事を続けていたとされています。
そのような状況でストレスをため込み、目の前の不安を解消するために患者を死亡させるという短絡的な発想に至ったことが、犯行の背景として認定されました。
ただし、精神的な特性や職場でのストレスは、殺人を正当化するものではありません。裁判所も動機そのものについては、身勝手で酌量できないと厳しく評価しています。
【死刑求刑の理由と無期懲役判決】横浜地裁・東京高裁は何を判断したのか
大口病院事件の裁判で特に注目されたのは、検察側が死刑を求刑したにもかかわらず、最終的に無期懲役が確定したことです。
2021年11月9日、横浜地裁が無期懲役を言い渡す2021年10月1日に始まった裁判員裁判で、久保木被告は起訴内容を全面的に認めました。
争点となったのは、主に刑事責任能力と量刑です。
検察側は、看護師という患者を守る立場を利用した計画的な犯行であり、3人の生命を奪ったことに加えて、さらに5件の殺人予備があったことを重視しました。被害者に落ち度はなく、社会的弱者を守るべき立場にあった者による犯行として、死刑を求刑しました。
一方、弁護側は、精神的な問題によって正常な判断能力が大きく低下していたと主張し、死刑を避けるべきだと訴えました。
2021年11月9日、横浜地裁は完全責任能力を認めたうえで、無期懲役を言い渡しました。
死刑を回避した理由は更生可能性と動機形成の過程横浜地裁は、犯行の計画性、生命軽視の姿勢、被害の重大性を厳しく評価しました。その一方で、犯行に至るまでの心理的な経緯や被告人の特性、反省の態度、更生可能性も考慮しました。
裁判所は、被告人の精神的な特性や職場でのストレスなど、自分の努力だけでは解決が難しい事情が動機形成に影響していたことを認めています。
また、被告人には前科前歴がなく、反社会的な性格傾向も認められず、逮捕後に起訴内容を認めて反省の態度を示していたことも量刑判断の材料となりました。
その結果、死刑を選択することがやむを得ないとまではいえないと判断し、無期懲役を選択しました。
2024年6月19日、東京高裁も無期懲役を支持一審判決に対し、検察側は刑が軽すぎるとして控訴しました。一方、弁護側も責任能力の判断に誤りがあるとして控訴しました。
控訴審では、検察側が改めて死刑を求め、弁護側は心神耗弱状態だったと主張しました。
2024年6月19日、東京高裁第11刑事部(三浦透裁判長)は双方の控訴を棄却しました。
東京高裁は、3人の生命を奪った結果や犯行の計画性、動機の身勝手さを認めています。その一方で、死刑は究極の刑罰であり、各事件の事情を総合的に検討して、真にやむを得ない場合に限って選択されるべきだという考え方を示しました。
判決では、一審が示した動機形成の経緯や更生可能性を考慮した量刑判断に不合理な点はないとされました。
2024年7月、久保木愛弓の無期懲役が確定「死刑を選択することには躊躇を感じざるを得ず、本件において死刑を科することがやむを得ないとまではいえない」
東京高等裁判所・2024年6月19日判決の量刑判断の趣旨
東京高裁の判決後、検察側と弁護側の双方が最高裁への上告を見送りました。
上告期限までに申し立てがなかったため、2024年7月4日、無期懲役が確定しました。
つまり、この事件は最高裁の判決によって終結したのではありません。東京高裁の控訴審判決が双方の上告見送りによって確定したものです。
【2026年現在】久保木愛弓の現在と旧大口病院・横浜はじめ病院のその後
事件から10年が経過した2026年11月現在、久保木愛弓の刑事責任については、すでに司法手続きが終了しています。
久保木愛弓は現在、無期懲役の受刑者久保木愛弓は、2024年7月に無期懲役が確定した受刑者です。
一審・二審ともに死刑ではなく無期懲役となったため、刑の内容が変更されることなく確定しました。
一方、2026年現在、収容されている刑務所の具体的な名称や施設内での生活、日常の様子などについて、信頼できる公的な詳細発表は確認できません。
そのため、刑務所内での具体的な生活や処遇、仮釈放に関する個別の予定などを断定することはできません。
少なくとも、現在の司法上の位置づけは、3件の殺人と5件の殺人予備について無期懲役が確定した受刑者ということです。
旧大口病院は横浜はじめ病院に改称事件現場となった病院は、事件後も名称を変えながら運営の形を変えてきました。
2017年には「横浜はじめ病院」に名称を変更しました。しかし、事件による影響もあり、2019年8月から患者の受け入れを休止しました。
その後、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、2021年12月1日に横浜市のコロナ専門病院として診療を再開しました。
このときは60床を確保し、リスクの高い高齢者や基礎疾患のある患者などを対象に、早期治療を行う施設として運営されました。
横浜市の公表資料によると、2021年12月から2023年3月までの受け入れ実績は合計1,625人でした。
しかし、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行することなどを踏まえ、コロナ専門病院としての事業は2023年3月31日に終了しています。
加えて、横浜市が公開した2024年12月1日現在の病院名簿では、横浜はじめ病院は「休止」と記載されています。2026年11月現在、通常診療を再開したことを示す公的な発表は確認できず、コロナ専門病院としての運営も終了した状態です。
このように、旧大口病院は事件後に名称変更、診療休止、コロナ専門病院としての再開、そして事業終了という経過をたどっています。
【プロの結論】大口病院事件から読み解く3つの重要な事実
大口病院事件を振り返ると、単なる連続殺人事件という枠組みだけでは捉えきれない、刑事司法と医療安全に関する重要な論点が見えてきます。
1.48人という数字だけで事件の全容を判断しない最も大きな誤解は、48人の患者が死亡したことと、久保木被告が48人を殺害したことを同一視することです。
刑事裁判で認定されたのは3人の殺人と5件の殺人予備です。48人の死亡には、個々の死亡原因や証拠の有無という別の問題があります。
事件の規模を理解するには、報道された死亡者数、捜査で疑われた余罪、起訴された犯罪、裁判で認定された事実を分けて読む必要があります。
2.死刑求刑と無期懲役判決は矛盾しない3人が殺害され、さらに5件の殺人予備があった事件で、検察側が死刑を求めたのは、犯行の悪質性と被害の重大性を重視したためです。
しかし、刑事裁判では、犯行の重大性だけでなく、責任能力、動機形成の経緯、被告人の個別事情、更生可能性なども総合的に検討されます。
東京高裁が無期懲役を維持したのは、犯罪の重大性を否定したからではありません。死刑という刑罰を選択することが、法的に真にやむを得ないといえるかを慎重に判断した結果です。
3.病院の安全管理は個人の良心だけに依存できないこの事件が医療現場に突きつけた問題は、薬剤や点滴の管理、職員間の情報共有、異常の早期発見、内部通報の扱いなどです。
横浜市の当時の検査資料には、医療安全管理体制や事故記録の整備、職員研修、薬剤管理などに関する改善事項が記されています。
医療機関に求められるのは、職員が善意で業務を行うことを前提にするだけではなく、異常が発生したときに早期に発見し、組織として対応できる仕組みを整えることです。
患者の生命を守る仕組みは、一人の医療従事者の倫理観だけで成立するものではありません。複数の職員による確認、記録の適正な管理、異常を報告できる環境など、組織的な安全対策が欠かせません。
大口病院事件は、医療従事者への信頼を裏切った犯罪であると同時に、病院内部の安全管理や組織運営のあり方を社会に問いかけた事件でもあります。
大口病院事件に関するよくある質問(FAQ)
Q1:大口病院事件で実際に殺害された患者は何人ですか?
A1:刑事裁判で殺人が認定されたのは3人です。興津朝江さん(当時78歳)、西川惣藏さん(当時88歳)、八巻信雄さん(当時88歳)です。また、別の患者への殺害を目的とした5件の殺人予備も認定されています。
Q2:大口病院の不審死48人は全員、久保木愛弓に殺害されたのですか?
A2:いいえ。48人は2016年7月から9月にかけて病院で死亡した患者の人数として報じられた数字です。48人全員が殺害されたと裁判で認定されたわけではありません。久保木被告について殺人が認定されたのは3人です。
Q3:久保木愛弓の犯行動機は何だったのですか?
A3:患者が自分の勤務時間中に死亡すると、遺族への説明や対応を求められることを恐れ、その負担を避けようとしたことが裁判所によって認定されています。3人それぞれの犯行について、勤務時間や家族対応との関係も具体的に判断されました。
Q4:なぜ死刑ではなく無期懲役になったのですか?
A4:裁判所は犯行の重大性、計画性、動機の身勝手さを認めながらも、犯行に至る心理的な経緯、精神的な特性、反省の態度、更生可能性などを総合的に考慮しました。その結果、死刑がやむを得ないとまではいえないと判断しました。
Q5:久保木愛弓の無期懲役はいつ確定しましたか?
A5:2024年6月19日に東京高裁が双方の控訴を棄却し、その後、検察側と弁護側の双方が上告しなかったため、同年7月に無期懲役が確定しました。
Q6:旧大口病院は現在どうなっていますか?
A6:2017年に横浜はじめ病院へ名称変更され、2019年8月に診療を休止しました。2021年12月からはコロナ専門病院として運営されましたが、2023年3月31日に事業を終了しています。横浜市の2024年12月現在の病院名簿では「休止」と記載されています。
大口病院事件は、2016年に横浜市の旧大口病院で発覚した点滴中毒死事件です。元看護師の久保木愛弓は、患者3人を殺害した罪と5件の殺人予備罪で起訴され、2021年に横浜地裁で無期懲役、2024年に東京高裁でも無期懲役となり、同年7月に刑が確定しました。
事件の背景には、自分の勤務時間中に患者が死亡し、遺族への対応を迫られることを避けたいという身勝手な動機がありました。裁判所は完全責任能力を認めながらも、精神的な特性や犯行に至る経緯、更生可能性などを考慮し、死刑を回避しました。
また、48人の不審死という数字は事件の異常さを示す一方、48人全員が殺害されたことを意味するものではありません。起訴された3件の殺人と5件の殺人予備、未立件の疑い、病院で死亡した患者の総数を正しく区別が必要です。
2026年現在、久保木愛弓の無期懲役は確定しており、旧大口病院を改称した横浜はじめ病院もコロナ専門病院としての事業を終了しています。
この事件が残した最大の教訓は、患者の生命と安全を守るためには、医療従事者個人への信頼だけでなく、組織全体で異常を発見し、防止する仕組みが必要だということです。被害者と遺族の苦しみを忘れず、医療現場の安全管理を考え続けることが求められています。
主な根拠資料: 横浜市の事件当時の医療安全検証資料、東京高等裁判所の2024年6月19日判決原文、横浜市のコロナ専門病院事業終了資料、事件公判に関する報道。