大相撲で使われる「三役(さんやく)」とは、一般的に大関・関脇・小結の3つの地位を総称する言葉です。幕内力士の中でも上位に位置し、横綱に次ぐ実力者として優勝争いや本場所の終盤を盛り上げる存在です。しかし、横綱が三役に含まれるのか、大関も含めて三役と呼ぶのに待遇面ではなぜ関脇・小結だけを指すのかなど、少し複雑な部分もあります。
日本相撲協会の公式説明によると、通常の意味では大関・関脇・小結が三役ですが、給与や年寄名跡の襲名資格など待遇上の区分では大関を除く関脇・小結を三役としています。この記事では、2026年10月現在の制度を踏まえ、番付の序列、昇進の仕組み、歴史的背景、千秋楽の「三役揃い踏み」まで、相撲初心者にも分かりやすく解説します。
【まず結論】相撲の三役とは大関・関脇・小結のこと!それぞれの違いを解説

大相撲における三役は、大関・関脇・小結の3つの地位をまとめた呼称です。いずれも幕内に所属する上位力士であり、前頭(平幕)より上の番付に位置します。
日本相撲協会は公式サイトの「大相撲クイズ No.701」で、通常の三役について大関・関脇・小結と説明しています。同時に、横綱は三役とは別格であり、待遇面では大関も三役から除かれるという、場面による意味の違いも紹介しています。
大関:横綱に次ぐ最高位の実力者大関は、横綱の一つ下に位置する地位です。三役の中では最上位で、優勝争いの中心となることが期待される力士が就きます。
大関への昇進には、三役での安定した好成績が大切です。一般的な目安として知られるのが、直近3場所で合計33勝以上という数字です。ただし、これは明文化された絶対条件ではなく、成績や相撲内容などを総合的に判断して決定されます。
大関は横綱とは異なり、一定の成績条件によって関脇へ陥落する可能性があります。一方、横綱は成績不振によって番付を下げる制度ではなく、引退という選択が求められる点で大きく異なります。
関脇:大関昇進を目指す上位力士関脇は、大関の下、小結の上に位置する地位です。三役の中でも大関に最も近い立場であり、大関昇進を目指す力士にとって重要なポジションとなります。
関脇で好成績を続ければ、大関昇進の候補として注目されます。特に、直近3場所の成績が優秀であれば、昇進の可能性が高まります。
ただし、関脇に在位しているだけで大関昇進が約束されるわけではありません。勝ち星だけでなく、安定した取り口や対戦相手との内容も評価されます。
小結:三役の入口となる地位小結は、関脇の下、前頭の上に位置する地位です。幕内上位の力士が目指す三役への入口に当たります。
前頭上位で横綱や大関、関脇などの強豪と対戦して好成績を残すことが、小結昇進につながる代表的なケースです。
初めて小結に昇進した力士は、相撲ニュースなどで「新三役」と紹介されることがあります。新三役は、これまで平幕だった力士が三役の地位に初めて到達したことを示す言葉です。
小結は三役の最下位とはいえ、幕内の上位に位置する重要な地位です。新三役として迎える場所では、上位力士との対戦が増えるため、真価が問われることになります。
【番付の序列】横綱は三役に含まれる?相撲の階級と人数を整理
三役を理解するには、大相撲の番付全体を把握することが欠かせません。大相撲の番付は、力士の地位を示すランキングであり、本場所の成績などを踏まえて編成されます。
大相撲の番付と階級一覧大相撲の番付は、上位から次のように並びます。
横綱 → 大関 → 関脇 → 小結 → 前頭 → 十両 → 幕下 → 三段目 → 序二段 → 序ノ口
このうち、横綱から前頭までが幕内です。十両以上の力士は「関取」と呼ばれ、幕下以下の力士とは給与や日常生活の待遇にも違いがあります。
三役は幕内の上位に位置する3つの地位を指します。横綱は番付の最高位ですが、現在の制度では三役とは別格です。
三役の序列と待遇上の区分を比較通常の呼び方と待遇上の区分を整理すると、次のようになります。
| 番付の地位 | 序列 | 通常の三役に含まれるか | 待遇上の区分 |
|---|---|---|---|
| 横綱 | 最高位 | 含まれない | 横綱独立区分 |
| 大関 | 2番目 | 含まれる | 大関独立区分 |
| 関脇 | 3番目 | 含まれる | 三役区分 |
| 小結 | 4番目 | 含まれる | 三役区分 |
| 前頭 | 5番目 | 含まれない | 幕内区分 |
| 十両 | 幕内の下 | 含まれない | 十両区分 |
| 幕下以下 | 下位の階級 | 含まれない | 養成員区分 |
横綱が三役に含まれない最大の理由は、歴史的に独立した最高位として扱われるようになったためです。
横綱の起源は、江戸時代の横綱免許にさかのぼります。日本相撲協会の相撲博物館の解説によると、寛政元年(1789年)に谷風梶之助と小野川喜三郎に横綱免許が与えられたことが、横綱の始まりとされています。
当初の横綱は、強豪力士に与えられる名誉的な称号でした。明治23年(1890年)には番付に横綱の文字が登場しましたが、当時はまだ大関が最高位という位置づけでした。
その後、明治42年(1909年)に横綱が正式に最高位として認められました。これによって横綱は大関から独立した地位となり、現在のように別格として扱われるようになったのです。
日本相撲協会の説明でも、横綱が正式な最高位になる以前は大関が最高位であり、三役は小結以上を意味していたとされています。
つまり、横綱が三役に含まれないのは、単純に番付が一つ上だからというだけではありません。相撲の歴史の中で、横綱が特別な地位として独立した経緯が背景にあります。
三役は力士3人という意味ではないもう一つ誤解されやすいのが、三役という言葉の「三」の意味です。
三役は、大関・関脇・小結という3種類の地位を指しています。必ず3人の力士しか在位できないという意味ではありません。
実際の番付では東西にそれぞれ力士が配置され、関脇や小結が複数人になる場合もあります。番付編成によって人数は変わるため、三役の力士が常に3人、あるいは6人と決まっているわけではありません。
観戦するときは、三役を人数ではなく階級の総称として理解すると、番付表や取組表を読みやすくなります。
【新三役から大関昇進へ】三役になる条件と昇進の目安
三役への昇進は、力士にとって大きな節目です。前頭上位で実績を積んだ力士が小結や関脇に昇進すると、対戦相手や待遇、注目度が変わっていきます。
新三役になる条件とは新三役とは、関脇または小結に初めて昇進した力士を指す一般的な呼び方です。
新三役への昇進に、誰もが共通して満たさなければならない「何勝以上」という単純な公式基準があるわけではありません。
番付編成会議では、本場所の成績や番付上の位置、上位力士の昇降などを踏まえて新しい番付が編成されます。前頭上位で勝ち越し、横綱や大関などとの対戦でも結果を残すことは、昇進に向けた大きな材料になります。
特に重要なのは、単に勝ち越すだけでなく、三役にふさわしい実力を示すことです。上位陣との対戦が多い中で安定した成績を残せるかどうかが評価されます。
大関昇進の目安は三役で3場所33勝三役からさらに上を目指す力士にとって、大きな目標となるのが大関です。
一般的に大関昇進の目安とされるのは、三役の地位で直近3場所合計33勝以上という成績です。例えば、11勝・11勝・11勝であれば合計33勝となります。
ただし、33勝は絶対条件ではありません。昇進の判断では、勝ち星だけでなく、相撲内容や安定性、対戦相手の実力なども考慮されます。
日刊スポーツが2026年9月23日に報じた大関昇進の解説でも、2000年以降に大関へ昇進した25人のうち21人が直近3場所で33勝以上を記録した一方、稀勢の里、豪栄道、朝乃山、正代は32勝で昇進したと紹介されています。
この実例からも、33勝はあくまで目安であり、機械的に適用されるルールではないことが分かります。
大関昇進は誰が決める?大関昇進は、力士本人や所属部屋の判断だけで決まるものではありません。日本相撲協会の番付編成会議や理事会など、所定の手続きを経て決定されます。
通常は、本場所で好成績を残した三役力士について、審判部が昇進の可能性を検討します。その後、番付編成会議での推挙や理事会の承認を経て、大関昇進が正式に決まります。
昇進が決定すると、使者が力士のもとを訪れて昇進を伝える伝達式が行われます。力士が口上を述べる場面は、大相撲の大きな節目として注目されます。
三役は単なる通過点ではなく、大関という特別な地位に進むための重要な評価の場でもあるのです。
【待遇面の三役】関脇・小結の給与と年寄名跡の関係
三役という言葉が分かりにくい最大の理由は、待遇面で通常の意味と異なる使われ方をすることです。
日本相撲協会の公式説明では、一般的な三役は大関・関脇・小結ですが、給与や年寄名跡の襲名・継承に関する区分では、大関を除いた関脇・小結だけを三役としています。
2026年10月現在の力士の月額給与2026年10月現在の関取の月額給与は、横綱300万円、大関250万円、関脇・小結180万円です。関脇と小結は同じ給与区分に分類されています。
加えて、2026年7月30日の日本相撲協会の理事会では、2027年初場所から力士の給与や手当を改定することが発表されました。関取の給与改定は2019年以来8年ぶりとなります。
2027年1月から適用される予定の月額給与は次のとおりです。
- 横綱:300万円から330万円
- 大関:250万円から275万円
- 三役(関脇・小結):180万円から200万円
- 前頭:140万円から155万円
- 十両:110万円から120万円
この数字からも、待遇上は横綱・大関・三役(関脇・小結)がそれぞれ独立した区分になっていることが分かります。
なお、上記は月額給与であり、賞与や本場所の手当、力士褒賞金、優勝賞金などを含む年間収入の総額ではありません。実際の収入は成績や地位、各種手当などによって変わります。
年寄名跡の襲名資格にも三役が関係する年寄名跡とは、力士が現役引退後に日本相撲協会に残り、親方として活動するために必要となる名跡です。一般的には「親方株」と呼ばれることもあります。
現役時代の実績は、引退後に年寄名跡を襲名する資格にも関係します。
日本相撲協会の説明では、横綱・大関経験者と、関脇・小結を経験した力士では資格要件の扱いが異なります。関脇・小結の場合、三役に1場所以上在位した実績が資格の一つとなります。
このほかにも幕内在位や関取在位の通算実績による資格ルートがあります。したがって、三役経験があれば自動的に親方になれるわけではなく、年寄名跡の規定や襲名に必要な手続きを満たす必要があります。
このように、現役時代の番付は引退後の進路にも関係しています。大関が一般的な意味では三役に含まれる一方、待遇上は別枠とされる理由も、こうした制度上の違いにあります。
【千秋楽の見どころ】三役揃い踏みと「これより三役」の意味
大相撲を観戦していると、千秋楽の終盤に「これより三役」という言葉を耳にします。三役の意味を理解するうえで、ぜひ知っておきたい伝統的な儀式です。
これより三役とは最後の3番の取組「これより三役」とは、本場所の千秋楽に行われる、結びの一番を含む最後の3番の取組を指します。
日本相撲協会の公式サイトでは、この最後の3番を「役相撲」とも呼ぶと説明しています。優勝争いや場所の締めくくりに関係する重要な取組が組まれるため、千秋楽のクライマックスとして注目されます。
ここで注意したいのは、「これより三役」の三役と、番付上の三役は必ずしも同じ意味ではないということです。
最後の3番に出場する力士が、必ず関脇・小結の力士というわけではありません。横綱や大関なども登場します。つまり、ここでは三役という言葉が、伝統的な最後の3番の取組を表す意味で使われています。
三役揃い踏みとは東西3人ずつが四股を踏む儀式三役揃い踏み(さんやくそろいぶみ)は、千秋楽の最後の3番に先立って行われる儀式です。
東方から3人、西方から3人の力士がそれぞれ土俵に上がり、三角形の隊形を組んで四股を踏みます。東西それぞれの力士が順番に所作を行い、最後の取組に向けて土俵を清めるような厳かな雰囲気を作り出します。
この儀式は大相撲ならではの伝統であり、千秋楽の終盤を象徴する光景です。
なお、三役揃い踏みに登場する6人も、必ずしも番付上の関脇・小結だけで構成されるわけではありません。最後の3番に出場する力士たちによって行われる儀式という点が重要です。
矢・弦・弓を受け取る伝統「これより三役」には、取組後の独特な慣習も残されています。
- 最初の取組:勝った力士に「矢」が与えられる。
- 2番目の取組:勝った力士に「弦」が与えられる。
- 最後の取組:本来は勝者に「弓」が与えられるが、実際には弓取式を行う力士が代わりに受け取る。
日本相撲協会の2025年6月10日付「大相撲クイズ No.1249」でも、この伝統が紹介されています。
弓・矢・弦が登場するのは、武家時代に弓や矢などが勝者への贈り物として用いられていた名残とされています。
最後の取組が終わった後に弓取式へと続く流れも、千秋楽ならではの見どころです。番付上の三役という言葉だけでは分からない、相撲の歴史と儀式のつながりを感じられる場面といえます。
【相撲の三役とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:相撲の三役に横綱は含まれますか?
A1:通常の意味では含まれません。三役は大関・関脇・小結を指し、横綱は最高位として別格に扱われています。ただし、千秋楽の三役揃い踏みには横綱が登場することもあります。
Q2:三役は何人いるのですか?
A2:三役は大関・関脇・小結という3つの地位を指す言葉で、力士が3人だけという意味ではありません。実際の人数は番付によって変わり、関脇や小結が複数人になることもあります。
Q3:新三役とは何ですか?
A3:関脇または小結に初めて昇進した力士を指す呼び方です。前頭から小結や関脇に上がった力士が、新三役として紹介されます。
Q4:関脇と小結ではどちらが上ですか?
A4:関脇の方が上です。番付では横綱、大関、関脇、小結、前頭の順に並びます。関脇は大関昇進を目指す地位、小結は三役の入口に当たる地位です。
Q5:大関になるには何勝必要ですか?
A5:一般的な目安は、三役で直近3場所合計33勝以上です。ただし、絶対的な規定ではありません。32勝で昇進した例もあり、審判部などが相撲内容や成績を総合的に判断します。
Q6:三役の月給はいくらですか?
A6:2026年10月現在、待遇上の三役に当たる関脇・小結の月額給与は180万円です。2026年7月に発表された改定により、2027年初場所からは200万円となる予定です。
相撲の三役とは、通常、大関・関脇・小結の3つの地位を指します。横綱は明治42年(1909年)に正式な最高位として独立した歴史的経緯から、現在は三役とは別格の存在です。
一方、給与や年寄名跡の襲名資格など待遇上の区分では、大関を除く関脇・小結だけが三役と呼ばれます。同じ言葉でも、一般的な番付の説明なのか、協会の待遇制度についての説明なのかによって意味が変わる点が大きなポイントです。
また、新三役への昇進は力士にとって大きな節目であり、その先には大関というさらなる目標があります。三役での直近3場所33勝という目安は知られていますが、実際には成績だけでなく相撲内容も評価されます。
千秋楽の「これより三役」や「三役揃い踏み」も、番付上の三役とは異なる伝統的な意味を持っています。東西3人ずつが土俵上で四股を踏み、最後の3番を迎える光景には、大相撲が受け継いできた歴史が表れています。
【プロの結論】 三役を理解する際に覚えておきたいのは、通常の意味では大関・関脇・小結、待遇上の意味では関脇・小結という2つの使い分けです。そして横綱は別格、三役揃い踏みは千秋楽の儀式という違いも押さえておけば、番付表や相撲中継の解説をより深く理解できます。
2027年初場所からは関取の給与改定も予定されており、三役を取り巻く待遇面にも変化が生まれます。力士の昇進争いだけでなく、番付制度や伝統行事にも目を向けることで、大相撲観戦の楽しみはさらに広がるはずです。
主な根拠資料: 日本相撲協会公式サイト「大相撲クイズ No.701」「大相撲クイズ No.1249」、相撲博物館の横綱に関する解説、日刊スポーツ(2026年7月30日・9月23日報道)、国立国会図書館レファレンス協同データベース。