2025年9月14日、東京・国立競技場を発着点として行われた東京2025世界陸上の女子マラソン。世界の強豪が集結した42.195kmのレースは、東京五輪金メダリストのペレス・ジェプチルチル(ケニア)が2時間24分43秒で優勝し、2大会連続の東京で再び世界の頂点に立つという劇的な結果になった。
日本勢では、世界選手権初出場の小林香菜(大塚製薬)が2時間28分50秒で7位入賞。佐藤早也伽(積水化学)は13位、安藤友香(しまむら)は28位だった。日本勢の女子マラソン入賞は2019年ドーハ大会以来、3大会ぶり。小林が中盤に入賞圏外まで順位を落としながら、終盤に再び順位を上げたレース展開も大きな見どころとなった。
【世界陸上女子マラソン2025結果】ジェプチルチルが2時間24分43秒で優勝!

東京2025世界陸上女子マラソン決勝は、2025年9月14日午前7時30分にスタートした。開催地は東京の国立競技場。東京の市街地を走り、最後は国立競技場に戻ってフィニッシュするコースで争われた。
優勝したのはケニアのペレス・ジェプチルチル。記録は2時間24分43秒だった。2位のエチオピア代表ティギスト・アセファは2時間24分45秒。両者の差はわずか2秒という、最後まで勝敗の分からない接戦だった。
ジェプチルチルは2021年の東京オリンピック女子マラソン金メダリストでもある。東京五輪に続き、再び東京で世界の頂点に立ったことは、この大会を象徴する結果となった。
3位にはウルグアイのフリア・パテルナインが2時間27分23秒で入った。パテルナインの銅メダルは、ウルグアイにとって世界陸上の女子種目で初めてのメダルという歴史的な快挙だった。
日本勢の最高順位は小林香菜の7位。メダルには届かなかったものの、世界のトップ選手が集まる大会で入賞を果たし、日本女子マラソンの存在感を示した。
【世界陸上女子マラソン順位一覧】小林香菜7位、佐藤早也伽13位、安藤友香28位
世界陸上公式結果による女子マラソンの上位成績と日本代表選手の順位は次の通り。小林は2時間28分台で7位に入り、日本勢トップの成績を残した。
| 順位 | 選手名 | 国・所属 | 記録 |
|---|---|---|---|
| 1位 | ペレス・ジェプチルチル | ケニア | 2時間24分43秒 |
| 2位 | ティギスト・アセファ | エチオピア | 2時間24分45秒 |
| 3位 | フリア・パテルナイン | ウルグアイ | 2時間27分23秒 |
| 4位 | スザンナ・サリバン | アメリカ | 2時間28分17秒 |
| 5位 | アリサ・ヴァイニオ | フィンランド | 2時間28分32秒 |
| 6位 | シタエ・エシェテ | バーレーン | 2時間28分41秒 |
| 7位 | 小林香菜 | 日本・大塚製薬 | 2時間28分50秒 |
| 13位 | 佐藤早也伽 | 日本・積水化学 | 2時間31分15秒 |
| 28位 | 安藤友香 | 日本・しまむら | 2時間35分37秒 |
日本代表の結果を見ると、小林が7位、佐藤が13位、安藤が28位と、3選手それぞれ異なる順位でフィニッシュした。特に小林の7位は、日本勢にとって2019年ドーハ大会の谷本観月以来となる入賞だった。
世界陸上の入賞は8位以内が対象となる。したがって、小林は表彰台こそ逃したものの、世界選手権の公式記録に残るトップ8入りを達成したことになる。
なお、7位の小林と6位のエシェテとの差は9秒。5位のヴァイニオとの差も18秒だった。世界の強豪がひしめく上位争いの中で、小林がどれほど接近した位置で戦っていたかが分かる。
【女子マラソンのレース展開】25キロ以降に順位が激変!小林香菜の粘りと終盤の勝負
東京大会の女子マラソンを振り返るうえで欠かせないのが、中盤から終盤にかけての順位変動だ。序盤から積極的な走りを見せた小林と、後半に勝負を仕掛けたケニア・エチオピア勢。それぞれの戦略が明暗を分けた。
序盤:小林香菜が先頭集団で積極的な走りレースは午前7時30分にスタート。世界陸連の大会レポートによると、スタート時の気象条件は気温28度、湿度82%。朝の時間帯とはいえ、選手にとって負担の大きい蒸し暑さだった。
序盤はアフリカ勢を中心に有力選手が集団を形成。アメリカのスザンナ・サリバンも前に出て、レース前半の主導権を握る時間が続いた。
小林も後方に控えるだけではなく、積極的に先頭集団でレースを展開した。公式大会レポートでは、中盤には一時2位争いに加わる場面もあったと伝えられている。
世界大会初出場の選手が強豪選手に臆することなく前方で勝負する姿勢は、小林の持ち味である積極性を示すものだった。
24〜25km付近:アフリカ勢の加速で小林が入賞圏外へ大きな転換点になったのが24km付近だった。
それまで先頭集団で粘っていた小林に対し、後方からケニアやエチオピアの有力選手たちが一気にペースを上げる。集団の速度が変わったことで、小林は次々と前を行く選手に先行を許した。
報道では、一時11位まで順位を落としたと伝えられている。日本勢の入賞を期待する視点からすれば、ここは最も厳しい局面だった。
ただし、順位を落としたことがそのまま失速や脱落を意味するわけではなかった。小林は自分のペースを維持しながらレースを続け、暑さや終盤の上り坂の影響でペースを落とした選手を一人ずつ追い抜いていった。
ここで重要なのは、序盤から先頭集団についていくことだけがマラソンの勝負ではないという点だ。42.195kmという長い距離では、前半に無理をした選手が後半に失速することもある。小林は順位を落としてもレースを崩さず、最後まで入賞の可能性を残した。
27.8km以降:ジェプチルチルとアセファの一騎打ち優勝争いが本格化したのは27.8km付近。ジェプチルチルとアセファが先頭で競り合う展開になり、2人のマッチレースが続いた。
アセファは2025年のロンドンマラソンで女子単独レースの世界記録を更新した実力者。ジェプチルチルも東京オリンピックの金メダリストであり、両者とも世界最高峰の舞台で勝負してきた経験を持つ。
42kmを過ぎて国立競技場に入ると、勝負は最後のトラックへ。バックストレートではアセファが前に出たものの、ジェプチルチルが残り100mで再びスパートをかけた。
最後の直線で抜け出したジェプチルチルが2時間24分43秒でフィニッシュ。アセファを2秒差で振り切り、金メダルを獲得した。
マラソンは単純に一定ペースを維持する競技ではない。勝負どころでの加速、相手の動きへの対応、残された体力の使い方が最終順位を左右する。東京大会は、その駆け引きが最後の100mまで続いた象徴的なレースだった。
【小林香菜7位入賞の理由】早稲田のランニングサークル出身から世界の舞台へ
今回の日本勢最大のニュースは、やはり小林香菜の7位入賞だ。
小林は2001年4月4日生まれ、群馬県出身。早稲田大学を卒業後、大塚製薬に所属して競技を続けている。世界陸連の大会レポートでは、早稲田大学のランニングサークル出身という経歴を持ち、社会人2年目で世界選手権に初出場した24歳として紹介された。
大阪国際女子マラソンでの実績を経て世界選手権へ小林は世界陸上以前から国内マラソンで実績を重ねていた。日本陸上競技連盟の選手プロフィールによると、2025年1月の大阪国際女子マラソンでは2位に入り、自己ベストの2時間21分19秒を記録している。
東京大会の2時間28分50秒は、この自己ベストを上回る記録ではない。しかし、世界大会特有のプレッシャーや高温多湿の気象条件、強豪選手との駆け引きがある中で7位に入ったことには大きな意味がある。
また、序盤に積極的なレースを展開し、中盤で順位を落とした後も立て直した点は、結果だけでは見えにくい評価ポイントだ。
日本陸連が公開した小林香菜のレース後コメント日本陸上競技連盟は大会当日、小林のレース後コメントを公開した。本人は代表選出時の心境や、先輩選手たちの世界大会での苦戦を見て感じていた不安、練習を信じて走ったことなどを振り返っている。
「自分のペースで前半から進めて、なんとか絶対8位に入ろうと思って、粘ってがんばりました。」
このコメントから伝わるのは、メダル争いだけに目を向けるのではなく、まず8位以内という具体的な目標を持って走っていたことだ。
中盤で順位を下げても、目標を見失わずに走り続けたことが7位という結果につながった。世界選手権初出場で入賞を果たした背景には、単なる勢いだけではなく、自己のペースを意識したレース運びがあった。
佐藤早也伽は13位、安藤友香は28位佐藤早也伽は2時間31分15秒で13位。2大会連続の世界選手権出場となり、前回大会の20位から順位を上げた。後半に追い上げる走りを見せ、日本勢2番手でフィニッシュしている。
一方、安藤友香は2時間35分37秒で28位。2017年ロンドン大会以来、4大会ぶり2度目の世界選手権出場だった。
3人の結果を単純に順位だけで比較するのではなく、出場経験やレース展開の違いも考慮する必要がある。小林は初出場で7位、佐藤は前回を上回る13位、安藤は久しぶりの世界大会で完走した。それぞれ異なる経験を持ち帰った大会だった。
【世界陸上女子マラソン歴代優勝者】日本の金メダリストと世界の勢力図
世界陸上の女子マラソンは、1983年の第1回ヘルシンキ大会から実施されている。長い歴史の中では、アフリカ勢やヨーロッパ勢が優勝を重ね、日本人選手も世界の頂点に立ってきた。
特に日本の女子マラソンファンにとって重要なのが、1993年と1997年の大会だ。
日本女子マラソンが世界を制した1990年代1993年シュツットガルト大会では浅利純子が優勝。続く1997年アテネ大会では鈴木博美が金メダルを獲得した。
この2大会連続の日本人優勝は、日本女子マラソンが世界トップレベルにあった時代を象徴する実績だ。
そのほか、1983年のグレテ・ワイツ(ノルウェー)、1987年のローザ・モタ(ポルトガル)、2005年のポーラ・ラドクリフ(英国)、2011年と2013年のエドナ・キプラガト(ケニア)など、時代ごとに異なる強豪選手がタイトルを獲得してきた。
近年はケニア・エチオピア勢が優勝争いの中心近年の優勝者を見ると、アフリカ勢の強さが際立つ。2019年はルース・チェプンゲティチ(ケニア)、2022年はゴティトム・ゲブレシラシエ(エチオピア)、2023年はアマン・ベリソ・シャンクレ(エチオピア)が優勝した。
そして2025年の東京大会では、ジェプチルチルがケニア勢の強さを改めて示した。
一方で、世界陸上の女子マラソンは必ずしもケニアとエチオピアだけで決着するわけではない。2025年にはウルグアイのパテルナインが銅メダルを獲得し、アメリカのサリバンが4位に入った。ヨーロッパ勢も上位に食い込んでいる。
つまり、現在の女子マラソンはアフリカ勢が有力である一方、レース当日のコンディションや戦術次第で他地域の選手にも上位進出の可能性がある。東京大会は、その競争の広がりを示した大会でもあった。
【東京2025大会から読み解く】女子マラソンで順位を左右する3つのポイント
小林の7位入賞とジェプチルチルの優勝を比較すると、女子マラソンの順位を決める要素が見えてくる。東京大会の結果を理解するうえでは、記録だけでなく、気象条件、ペース配分、終盤のコース対応にも注目したい。
1. 気温と湿度が後半の体力消耗に影響する東京大会の公式レポートが示した気象条件は、気温28度、湿度82%。マラソンでは長時間にわたって走り続けるため、暑さと湿度の高さが選手の負担になる。
気温だけを見れば真夏の猛暑日ほどではなくても、湿度が高い環境では汗が蒸発しにくく、体温調節が難しくなる。序盤に積極的に走った選手が後半にペースを維持できるかどうかも、こうした条件に左右される。
2. 25km前後は順位が大きく動く勝負どころ小林が一時入賞圏外に下がったのは24km付近。後方からアフリカ勢がペースを上げたことが、順位変動のきっかけになった。
ただし、マラソンでは中盤の順位がそのまま最終順位になるとは限らない。先行する選手のペースが落ちれば、後方の選手にも順位を回復する機会が生まれる。
小林が7位まで順位を戻したことは、25km前後の位置取りだけでは最終的な評価が決まらないことを示している。
3. 最後のトラック勝負では瞬発力も問われるジェプチルチルとアセファの勝負は、競技場に入ってからも決着しなかった。アセファがバックストレートで前に出た後、ジェプチルチルが残り100mで逆転した。
42km以上を走った後に、最後の直線でスパートできるかどうか。マラソンでは持久力が基本となるが、世界選手権のようなトップレベルのレースでは、終盤のスピードと競り合いへの対応力も勝敗を左右する。
2時間24分43秒という記録だけでなく、2秒差の決着に至るまでの駆け引きこそ、東京大会の優勝争いを印象深いものにした理由だ。
【世界陸上女子マラソン】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2025年の世界陸上女子マラソンで優勝した選手は誰ですか?
A1:ケニアのペレス・ジェプチルチルです。2025年9月14日の東京大会で2時間24分43秒を記録し、エチオピアのティギスト・アセファを2秒差で破って優勝しました。
Q2:日本人選手の最高順位は何位でしたか?
A2:小林香菜の7位です。記録は2時間28分50秒で、日本勢の女子マラソン入賞は2019年ドーハ大会以来、3大会ぶりとなりました。佐藤早也伽は13位、安藤友香は28位でした。
Q3:小林香菜は25km以降に順位を落としたのですか?
A3:24km付近で後方からアフリカ勢が加速したため、一時入賞圏外まで順位を落としました。しかし、その後はペースダウンした選手を一人ずつ追い抜き、最終的に7位でフィニッシュしました。
Q4:ジェプチルチルの2時間24分43秒は世界記録ですか?
A4:世界記録ではありません。東京2025世界陸上の女子マラソンで優勝した際の記録です。大会では2位のアセファとの2秒差の勝負を制しました。
Q5:世界陸上女子マラソンで日本人が優勝したことはありますか?
A5:あります。浅利純子が1993年シュツットガルト大会、鈴木博美が1997年アテネ大会で金メダルを獲得しています。日本女子マラソンには世界選手権で2度の優勝実績があります。
2025年9月14日の東京2025世界陸上女子マラソンは、ペレス・ジェプチルチルが2時間24分43秒で優勝し、東京オリンピックに続いて東京で栄冠を手にした大会となった。2位のアセファとはわずか2秒差。最後の100mまで勝負が分からない、世界最高峰の競り合いだった。
日本勢では小林香菜が2時間28分50秒で7位入賞。佐藤早也伽が13位、安藤友香が28位という結果を残した。小林の入賞は、日本勢にとって3大会ぶりの快挙だった。
特に注目すべきは、小林が中盤に入賞圏外へ後退しながらも、終盤に順位を回復したことだ。先頭集団についていくだけではなく、自分のペースを守り、最後まで走り切る力が7位という結果につながった。
世界陸上の女子マラソンを評価するとき、優勝者のタイムやメダルだけに注目するのでは、レースの本当の面白さを見落としてしまう。中盤の順位変動、気象条件への対応、終盤の粘り、そして最後の競り合いまで含めて見ることが重要だ。
1993年の浅利純子、1997年の鈴木博美に続く日本勢の新たな優勝を目指すうえでも、小林の7位入賞は次につながる成果といえる。東京大会は、日本女子マラソンが世界のトップ8に再び食い込む力を示した一戦として記憶されるだろう。