広島県民が「広島焼き」という呼び方に抵抗を感じる理由は、大きく分けて3つあります。
理由① 広島では、それが昔から「お好み焼き」だから最も大きな理由は、地元の人にとって広島のお好み焼きは、わざわざ地域名を付ける必要のない日常的な料理だからです。
広島市内で「今日、お好み焼きを食べに行こう」と言えば、一般的には広島式のお好み焼きを指します。
そこに「広島焼き」という別の名称を付けると、地元の人には、自分たちが日常的に食べてきた料理を別物として扱われたように感じられる場合があります。
一般財団法人お好み焼アカデミーも、2016年のJ-CASTニュースの取材で、広島のものも「お好み焼き」と呼ぶという立場を説明しています。
広島のも、「お好み焼き」と言います。
この考え方の根底にあるのは、広島のお好み焼きも関西のお好み焼きも、同じ「お好み焼き」という料理文化の一つだという認識です。広島だけを別の料理名で呼ぶことに違和感を覚える人がいるのです。
理由② 「広島風」という表現にも引っかかる人がいる「広島焼き」よりは穏やかに聞こえる「広島風お好み焼き」ですが、こちらも全員が歓迎しているわけではありません。
一部の県民が気にするのは、「風」という言葉が持つニュアンスです。
例えば、次のような受け止め方があります。
- 関西のお好み焼きが標準で、広島はその派生版のように聞こえる。
- 広島独自の食文化なのに、模倣した料理のように扱われる。
- 地元では普通にお好み焼きと呼んでいるのに、県外の基準で名前を付けられている。
中国新聞が紹介した県民の意見にも、関西のものを本流とし、広島を亜流とするような印象に抵抗を感じる声がありました。
ただし、「広島風」という表現については許容する人もいます。
県外の人に説明する際には、関西風との違いを伝えやすいという実用的な利点もあるためです。
理由③ 「広島焼き」という言葉そのものに違和感があるもう一つの論点は、日本語としての名称の不自然さです。
「広島焼き」という呼び方は、地域名と料理の焼き方を組み合わせた表現ですが、広島の人には、料理名として定着している「お好み焼き」をわざわざ変更したように感じられます。
中国新聞の取材では、「広島焼き」という名称から「広島を焼いた」という印象を受けて不快に感じるという県民の意見も紹介されました。
ただし、これを広島県民全体に共通する反発の理由と考えるのは正確ではありません。
実際には、料理名としての違和感や地域文化への愛着など、複数の感情が重なっています。
【2】広島焼きという呼び方はいつから?一銭洋食から続く歴史

「広島焼き」という呼び方への反発を理解するには、広島のお好み焼きがどのように生まれ、地域に根付いたのかを知る必要があります。
戦前の一銭洋食が広島のお好み焼きの前身お好み焼アカデミーの歴史紹介によると、広島のお好み焼きの前身とされるのは、戦前の駄菓子屋などで親しまれた「一銭洋食」です。
小麦粉を水で溶き、薄く焼いた生地にネギや削り節などを乗せて食べる、シンプルな軽食でした。
現在の広島のお好み焼きとは材料もボリュームも異なりますが、鉄板で生地を焼き、その上に具材を重ねるという食べ方につながる原型です。
1945年の原爆投下と戦後復興が大きな転換点に1945年8月6日、広島市に原子爆弾が投下されました。
街は壊滅的な被害を受け、市民は食料不足や生活基盤の喪失に直面します。
その中で、小麦粉を使った一銭洋食が再び作られるようになりました。
一般財団法人お好み焼アカデミーの説明では、焼け残った鉄板と、アメリカからの食料支援による小麦粉が、再び一銭洋食を作るきっかけになったとされています。
食材が限られる中で、キャベツ、卵、豚肉、そばなどが加わり、現在の広島のお好み焼きへと発展していきました。
広島県と広島市が関係する2026年1月発行の資料『広島の復興の歩み』にも、この歴史が詳しく記されています。
同資料では、終戦後、被爆を免れた街角に鉄板を置いた簡素な飲食店が登場し、女性が店の経営や調理を担ったことにも触れています。
戦争で夫を失った女性たちが、子ども向けの駄菓子屋の一銭洋食を再び焼き始め、空腹を抱えた子どもたちが持ち寄る残り物の野菜や冷やご飯も活用されました。
お好み焼きは、単なる食事ではなく、地域の人々が支え合う場所にもなっていったのです。
1950年代から1975年にかけて全国的な知名度が高まる昭和25(1950)年ごろには、広島市の新天地周辺にお好み焼きの屋台が登場しました。
中華そばを加え、卵でとじる現在の基本的なスタイルも形成されていきます。
加えて、1969年には屋台の一部が集まり、「お好み村」が誕生しました。
大きな転機となったのが1975年です。
広島東洋カープが10月15日に球団初のリーグ優勝を果たし、新天地のお好み村も大きな盛り上がりを見せました。
テレビが店内の様子を全国に伝えたことは、広島のお好み焼きが全国に知られるきっかけの一つになったと、広島の復興資料は説明しています。
「広島焼き」という名称が広まったのはいつ?では、問題となっている「広島焼き」という言葉は、いつ生まれたのでしょうか。
日刊SPA!が2023年に掲載した新聞・雑誌の調査記事によると、「広島焼き」という表現は1980年代前半から確認でき、同じ時期に「広島風お好み焼き」という言い方も登場したとされています。
広島のお好み焼きが県外に広がる過程で、他地域のものと区別するために生まれた呼称と考えられています。
ただし、最初に誰が名付けたのかは判明していません。
同記事では、1991年10月4日付の中日新聞にも、名古屋の物産展で「広島焼き」という表記が使われていたことが紹介されています。
つまり、2016年のNHK騒動で初めて生まれた言葉ではありません。
もともと県外で使われていた分類上の呼称が、広島県民の間で問題視されるようになり、全国的な議論へと発展したと見るのが自然です。
【3】NHK「サラメシ」の広島焼きテロップ修正とは?騒動の経緯を時系列で検証
「広島焼き怒る」という検索が広まった背景には、NHKの番組「サラメシ」で起きたテロップ問題があります。
この出来事は、地元の人々が名称にどれほどこだわっているかを全国に知らしめた代表的な事例です。
2016年9月20日、広島特集で「広島焼き」と表示問題が起きたのは、2016年9月20日放送のNHK「サラメシ」です。
同番組は、働く人々の昼食を紹介する番組で、この日は広島東洋カープのリーグ優勝に関連した広島特集が組まれていました。
その中で、広島のお好み焼きを紹介する際、画面上のテロップに「広島焼き」と表示されました。
これに対し、広島県民を中心に視聴者から抗議が寄せられました。
J-CASTニュースが2016年11月10日に報じた内容によると、NHKの9月分の視聴者対応報告にも、視聴者からの意見が記録されていました。
NHKは地元局に意見を聞き、再放送で修正抗議を受けた番組スタッフは、広島放送局に電話して地元の意見を確認しました。
その後、番組プロデューサーが表記を変更する判断を下します。
当初の「広島焼き」というテロップは、再放送時に「お好み焼き」へ修正されました。
J-CASTニュースによると、修正が行われたのは、最初の放送から2日後の再放送です。
番組側は、広島を特集しておきながら、地元の人々の気持ちを損なうことには意味がないと判断したと伝えられています。
この対応は、単なる誤字訂正とは異なります。
料理の地域性をどう表現するかについて、視聴者の声を受けて番組側が判断を見直した事例です。
呼称問題の主な出来事を一覧で整理この時系列から分かるのは、「広島焼き」という呼び方の問題が、一時的なテレビ番組の騒動だけではないということです。
戦後に育まれた地域の食文化と、県外で料理を説明するために生まれた呼称との間に、認識のずれがあったのです。
【4】広島焼きと広島風お好み焼きの違いは?関西風との比較と正式名称
呼び方の問題を理解するうえでは、広島と関西のお好み焼きの作り方の違いも押さえておきたいところです。
広島のお好み焼きは「重ね焼き」広島式の特徴は、材料を混ぜ合わせず、順番に重ねて焼くことです。
一般的な作り方は次のとおりです。
1. 小麦粉を水で溶いた生地を鉄板に薄く広げる。
2. キャベツやもやしをたっぷり重ねる。
3. 豚バラ肉などを加えて焼く。
4. 別に炒めた中華そば、またはうどんを重ねる。
5. 卵を焼き、全体を重ねて仕上げる。
6. ソースや青のりなどを加える。
お好み焼アカデミーによると、広島式ではキャベツを約150グラム使用するのが大きな特徴です。
麺を加えることも一般的で、食べ応えのある一品になります。
関西風は「混ぜ焼き」一方、関西風は小麦粉をだし汁で溶いた生地に、キャベツ、卵、山芋などの具材を混ぜてから鉄板で焼きます。
生地と具材が一体となり、ふんわりした食感になるのが特徴です。
麺を入れる場合には、モダン焼きなど別のメニューとして提供されることもあります。
| 比較項目 | 広島のお好み焼き | 関西のお好み焼き |
|---|---|---|
| 基本の焼き方 | 重ね焼き | 混ぜ焼き |
| 生地 | 薄く広げる | 具材と混ぜる |
| キャベツ | たっぷり重ねる | 生地に混ぜる |
| 麺 | そば・うどんが一般的 | 通常は基本生地に入れない |
| 食感 | 層があり、麺の食感も楽しめる | ふんわりした食感 |
| 代表的な呼び方 | お好み焼き・広島お好み焼 | お好み焼き・関西風お好み焼き |
両者は同じお好み焼きという料理文化に属しながら、地域ごとに独自の発展を遂げたものです。
どちらが正統で、どちらが亜流という単純な話ではありません。
広島お好み焼きの正式名称は?ここで気になるのが、正式名称の問題です。
結論からいうと、料理名として法律で一つに統一された名称があるわけではありません。
ただし、公的な食文化紹介や業界団体の発信を見ると、表記には一定の傾向があります。
- 農林水産省:お好み焼き(広島県)
- お好み焼アカデミー:広島のお好み焼き
- オタフクソースなどの業界発信:広島お好み焼
特にオタフクソースの呼称の変遷は興味深いものです。
毎日新聞の校閲記者による2023年の記事では、同社への取材を通じて、1990年代初めには「広島風」という表現が県外で広く使われていたため、オタフクソースは「広島流」という呼称を使用していたことが紹介されています。
その後、地域の料理として表現するため、「広島お好み焼」に統一する方針を決めたのは2008~09年ごろとされています。
これはオタフクソースという企業の呼称統一の取り組みであり、国が名称を制定したという意味ではありません。
【5】広島県民のお好み焼きに対する本音は?中国新聞の200件超の意見を検証
「広島県民は全員、広島焼きという言葉に怒る」というイメージは、本当に正しいのでしょうか。
実際の県民の声を知るうえで参考になるのが、2022年に中国新聞U35が取り上げた呼称問題です。
中国新聞の調査には200件以上の意見中国新聞はLINEの読者に対して、「広島焼き」や「広島風」という呼び方に違和感があるかを尋ねました。
寄せられた意見は200件以上。
そこには、強い反発から冷静な容認まで、さまざまな意見が含まれていました。
なお、これはLINE読者から寄せられた意見の紹介であり、広島県民全体を無作為抽出した統計調査ではありません。
反対派:「そんな食べ物はない」という強いこだわり中国新聞の記事では、広島市東区の会社員男性が「広島焼き」という名前に反発する意見を寄せています。
その理由は、広島のものはあくまでお好み焼きであり、「広島焼き」という名前では本来の料理を正しくイメージできないというものです。
また、広島市西区の公務員男性は、県外の知人から広島の料理を「広島焼き」と呼ばれた際に、不快感を覚えたと紹介されています。
特に、自分たちの食文化を大阪のお好み焼きとは別物として扱われることへの違和感が目立ちます。
容認派:「区別しやすいなら問題ない」一方、すべての県民が強く反発しているわけではありません。
中国新聞の記事では、関西風との違いを説明する際に「広島焼き」や「広島風」という言葉を使うことは分かりやすい、という意見も紹介されています。
また、広島に興味を持ってもらい、実際に食べに来てもらえるなら呼び方にこだわらないという考え方もあります。
加えて、福山市の男性からは、県東部では関西風のお好み焼きが主流であり、地域によって料理に対する思い入れも違うという意見が寄せられました。
この点は見落とせません。
広島県民といっても、全員が同じ食文化や呼称へのこだわりを持っているわけではないのです。
お好み村の関係者も観光客の呼び間違いには寛容興味深いのは、実際にお好み焼き店を営む側の反応です。
中国新聞は、お好み村組合の豊田典正理事長の意見も紹介しています。
観光客が「広島焼き」と注文することは珍しくないものの、知らない人に対して怒るのではなく、丁寧に説明すればよいという考え方です。
これは、地元の食文化を大切にすることと、観光客に親しんでもらうことが両立できるという現場の視点です。
県民の本音を整理すると- 強い反発派:広島のものはお好み焼きであり、別の料理名にされたくない。
- 違和感派:「広島風」も広島が亜流のように聞こえる場合がある。
- 容認派:県外の人に説明するなら地域名を付けても構わない。
- 実用派:観光客の呼び間違いは気にせず、正しい名前を教えればよい。
つまり、問題の本質は、広島県民全員が怒ることではありません。
地元の食文化に強い愛着を持つ人が一定数おり、その呼び方に対する考え方が県民の間でも分かれているということです。
【6】【プロの結論】広島焼きと呼ばないほうがいい?地域差を踏まえた自然な呼び方
ここまでの歴史、公式資料、報道、県民の意見を踏まえると、実際にどのような呼び方をすればよいのでしょうか。
おすすめは、相手や会話の場面によって呼び方を使い分けることです。
広島県内では「お好み焼き」が最も自然広島市内の飲食店で注文するなら、「お好み焼きをください」で十分です。
わざわざ「広島焼き」と付け加える必要はありません。
地元の人との会話でも、まずは「お好み焼き」と呼ぶのが自然です。
県外では「広島のお好み焼き」が分かりやすい全国向けの記事や会話では、次の表現が使いやすいでしょう。
| 場面 | おすすめの表現 |
|---|---|
| 広島県内の会話 | お好み焼き |
| 全国向けの説明 | 広島のお好み焼き |
| 料理の地域分類 | 広島お好み焼き |
| 関西風との比較 | 広島風お好み焼き |
| 広島県民との会話 | お好み焼き |
「広島風お好み焼き」も、地域外の人に料理を説明する際には使われています。ただし、相手によっては違和感を覚える可能性があるため、地元の人には「お好み焼き」と呼ぶほうが無難です。
よくある3つの誤解誤解①:広島県民は全員が広島焼きという言葉に怒る
実際には容認する人もいます。中国新聞の取材でも、呼び方にこだわらない人や、観光客に対して寛容な店側の意見が紹介されています。
誤解②:広島焼きという名前はNHKが作った
これは誤りです。新聞・雑誌の調査では、1980年代前半から使用例が確認されています。NHKの騒動は呼称を全国的に知らしめた出来事です。
誤解③:広島風という言い方も絶対に禁止
これも正確ではありません。広島風という表現を受け入れる人もいます。関西風と区別するための説明として使われることもあります。
呼び方よりも大切なのは、地域の食文化への理解広島のお好み焼きは、戦前の一銭洋食を前身とし、戦後の食料難と復興の中で発展してきました。
焼き方や具材だけでなく、鉄板を囲む食事の風景、地域の人々の交流、街の復興の記憶までが結び付いています。
だからこそ、地元の人にとっては単なる料理の分類では済まない場合があります。
「広島焼き」と呼んだからといって、必ず怒られるわけではありません。しかし、相手が大切にしている呼び方を尊重することは、食文化を理解する第一歩です。
【広島焼きと言うと怒るの理由】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:広島焼きと言うと本当に広島県民は怒るのですか?
A1:怒る人もいますが、全員ではありません。広島のお好み焼きに強い愛着を持ち、「広島焼き」という呼称を不適切と考える人がいる一方、県外の人が分かりやすいように使うのであれば気にしない人もいます。
Q2:広島お好み焼きの正式名称は何ですか?
A2:一般的には「お好み焼き」と呼ばれます。地域を明確にする場合は「広島お好み焼き」や「広島のお好み焼き」という表現が使われます。農林水産省の郷土料理紹介でも「お好み焼き(広島県)」と表記されています。
Q3:NHKのサラメシでは、なぜ広島焼きのテロップが修正されたのですか?
A3:2016年9月20日の放送で「広島焼き」と表示したところ、広島県民を中心に視聴者から抗議が寄せられたためです。番組スタッフが地元局に意見を確認し、2日後の再放送では「お好み焼き」に変更しました。
「広島焼き」と呼ぶと怒る人がいる理由は、単に言葉の好き嫌いだけではありません。
戦前の一銭洋食から始まり、1945年の原爆投下後の食料難、戦後復興、屋台文化の発展を経て、広島のお好み焼きは地域を代表する食文化になりました。
その歴史を知れば、地元の人が「広島焼き」ではなく「お好み焼き」と呼んでほしいと考える理由も理解できます。
2026年現在、覚えておきたい要点は次の3つです。
- 広島県内では「お好み焼き」と呼ぶのが自然。
- 県外で説明するときは「広島のお好み焼き」が分かりやすい。
- 「広島焼き」に対する反応は人それぞれで、県民全員が怒るわけではない。
広島焼きという言葉を使っただけで、必ずトラブルになるわけではありません。
しかし、料理の名前には、その土地で暮らす人々の歴史や思いが込められていることがあります。
次に広島のお好み焼きを食べるときは、ぜひ「お好み焼き」と呼んでみてください。その一言には、広島の食文化への敬意も込められています。
主な参考資料・情報源
- 広島県・広島市関係資料『広島の復興の歩み』(2026年1月)
- 農林水産省「うちの郷土料理・お好み焼き(広島県)」
- 一般財団法人お好み焼アカデミー「お好み焼の歴史」「設立への想い」
- 中国新聞U35「お好み焼き愛の裏返し? 呼び方問題に広島県民たちから異論反論200件」(2022年)
- J-CASTニュース「『広島焼き』表現に広島県民怒る NHKテロップ修正でネット論議」(2016年11月10日)
- 毎日ことばplus「広島風お好み焼き? 広島流? 広島お好み焼き?」(2023年5月7日)
- 日刊SPA!「広島で『広島焼き』がタブー扱いされる理由を探る」(2023年6月2日)