(1995年)
岩井俊二の代表作。手紙を通じて過去の恋愛と記憶がよみがえるラブストーリー。
(2020年)
手紙の行き違いをきっかけに、二世代の恋愛と家族の記憶を描く作品。
『ラストレター』を語る際に避けて通れないのが、1995年公開の『Love Letter』との比較です。
両作品には、手紙を中心に物語が展開すること、過去と現在が交錯すること、失われた人への思いが物語を動かすことなど、共通する要素があります。
しかし、ストーリーそのものは別の作品です。
『Love Letter』と『ラストレター』の比較| 比較項目 | Love Letter | ラストレター |
|---|---|---|
| 公開年 | 1995年 | 2020年 |
| 監督 | 岩井俊二 | 岩井俊二 |
| 物語の中心 | 亡き恋人の記憶と手紙 | 姉の死と初恋、家族の記憶 |
| 主な舞台 | 神戸・小樽など | 宮城県 |
| 主な出演者 | 中山美穂、豊川悦司など | 松たか子、広瀬すず、福山雅治など |
| 共通点 | 手紙による記憶の再発見 | 手紙による記憶の再発見 |
興味深いのは、岩井監督自身が両作品の関係について語っていることです。
2020年の雑誌「SWITCH」公開記念ロングインタビューでは、『ラストレター』の企画が『Love Letter』を意識した作品として発展していった経緯を説明しています。
監督は、あえて似た要素を残すことで、それぞれの作品の違いが明確になると考えていました。
また、時代が変わり、手紙を書く習慣が薄れていくなかで、なぜ登場人物たちが手紙を書かなければならないのか。その必然性を物語の仕掛けによって成立させたことも明かしています。
この考え方が『ラストレター』の独自性につながっています。
『Love Letter』が手紙によって過去の恋愛の記憶をたどる作品なら、『ラストレター』は手紙によって過去の恋愛だけでなく、親子や姉妹の記憶まで掘り起こす作品です。
中山美穂と豊川悦司の出演にも注目両作品のつながりを感じさせるのが、中山美穂と豊川悦司の出演です。
『Love Letter』で印象的な共演を見せた二人が、『ラストレター』にも出演しています。
単なる過去作の出演者の再起用ではなく、岩井監督が築いてきた映画世界への目配せとして受け取れる配役です。
初めて『ラストレター』を見る人は独立したラブストーリーとして楽しめますし、『Love Letter』を見ている人は、共通する演出や人物配置を探す楽しみもあります。
【宮城県のロケ地】仙台・白石に残る映画の風景

『ラストレター』の映像を特徴づけているのが、宮城県の自然や街並みです。
岩井俊二監督の出身地でもある宮城県が物語の舞台となり、2018年夏に撮影が行われました。
せんだい・宮城フィルムコミッションの特集資料では、仙台市内と白石市周辺の撮影場所が詳しく紹介されています。
仙台市内の主なロケ地
ホテルメトロポリタン仙台
劇中の高校同窓会会場。裕里が未咲と間違われ、鏡史郎と再会する重要な場所です。
仙台駅東口・宮城野通
同窓会の帰りに裕里と鏡史郎が再会する場面の撮影場所。バス停やベンチも設置されました。
宮城学院女子大学図書館
裕里の勤務先として登場。閲覧室や職員事務室でも撮影されました。図書館は学生・大学関係者向けで、一般開放されていません。
カフェモーツァルトアトリエ
裕里がカフェで鏡史郎への手紙を書くシーンに登場。広瀬川沿いの緑豊かなロケーションが特徴です。
愛宕神社
裕里と子どもたちが祖母を探しに来る場面の撮影場所です。
白石市・武家屋敷
裕里が自転車で通りかかった未咲を鏡史郎に紹介する場面の撮影場所。沢端川沿いの歴史ある風景が印象的です。
ふれiデッキ
鏡史郎が母校を訪れる場面に登場。撮影時にはバス停が設置されました。
滑津大滝
未咲の葬儀が行われた寺の近くにある滝という設定で登場。高さ約10メートル、幅約30メートルの二段の滝です。
ロケ地を巡る際には、大学図書館のように一般の人が入れない施設があることにも注意が必要です。また、撮影時と現在では店舗の営業状況が異なる場合があります。
映画の風景を楽しむなら、仙台市内の街並みと白石・七ヶ宿の自然を組み合わせると、作品の二つの世界を感じやすくなります。
【主題歌・音楽】森七菜が歌う「カエルノウタ」の魅力
歌:森七菜
作詞:岩井俊二
作曲:小林武史
発売日:2020年1月15日
本作の主題歌は、森七菜が歌う「カエルノウタ」です。
森七菜は劇中で岸辺野颯香と高校時代の裕里を演じるだけでなく、主題歌も担当しました。
加えて、この曲が歌手デビュー作品となりました。
ソニーミュージックの2019年12月11日付の発表によると、作詞は岩井俊二、作曲は映画音楽を担当した小林武史です。シングルは2020年1月15日に発売されました。
小林武史の音楽が支える岩井作品の世界小林武史は『ラストレター』の劇伴音楽も担当しています。
映像と音楽が独立して存在するのではなく、登場人物の感情や風景の印象を補い合っている点が特徴です。
特に本作では、青春時代の記憶と現在の生活が交互に描かれます。そのため、音楽は単なる場面転換の演出ではなく、時間の隔たりをつなぐ役割も果たしています。
森七菜の歌声をきっかけに作品を知った人にとっても、映画を見た後では曲の印象が変わるはずです。
【評判・感想・配信情報】2026年に見る『ラストレター』
Filmarksの評価と視聴者の反応映画レビューサービスのFilmarksでは、作品評価は5点満点中3.7点。確認できる掲載データでは、レビュー数は約3万8,000件に達しています。
評価分布では3.1~4.0点が約66%、4.1~5.0点が約19%となっています。
ユーザーの感想に見られる主な評価要点は次のとおりです。
好意的に評価されているポイント
- 松たか子、広瀬すず、森七菜らの自然な演技
- 宮城県の風景を生かした美しい映像
- 手紙を通じて伝わる人間関係の温かさ
- 初恋や青春時代の記憶を呼び起こす演出
- 音楽と映像が生み出す独特の余韻
一方で、作品の構成には好みが分かれる部分もあります。
- 現在と過去の人物関係が複雑で、整理しながら見る必要がある
- 複数の登場人物の手紙が交差するため、物語の中心が分かりにくく感じられる場合がある
- 恋愛映画として明快な結末を期待すると、余韻を重視したラストに物足りなさを感じる可能性がある
映画.comの評論でも、『Love Letter』を思い起こさせる作品であることや、夏の時間を使って過去と現在を交差させる演出が評価されています。
原作小説は映画と同じ?著者:岩井俊二
単行本発売:2018年10月25日
文庫発売:2019年9月3日
『ラストレター』には、岩井俊二自身が執筆した原作小説があります。
映画公開に先立つ2018年10月25日に単行本が発売され、その後、2019年9月3日に文春文庫版が発売されました。
単行本は216ページ、文庫版は256ページです。
原作小説を読むメリットは、映画で描かれた登場人物の心情や手紙の意味を、文章を通じて改めて考えられることです。
特に鏡史郎の小説家としての人生や、未咲に対する長年の思いに注目すると、作品の理解が深まります。
映画を先に見てから読む方法でも、原作を読んでから映像を見る方法でも楽しめる作品です。
2026年の映画『ラストレター』配信情報2026年の配信比較情報では、主な視聴候補として次のサービスが挙げられています。
| 配信サービス | 掲載されている視聴形態 |
|---|---|
| Netflix | 見放題 |
| Amazon Prime Video | 見放題・レンタル・購入 |
| U-NEXT | 見放題 |
| DMM TV | レンタル |
| TELASA | レンタル |
| Lemino | レンタル・購入 |
2026年8月時点のFilmarksの配信情報と、同年11月初旬の配信比較情報を参考にした一覧です。
配信作品は契約や地域によって変動するため、視聴前に各サービスで作品名を検索するのがおすすめです。
DVD・Blu-rayについては、東宝から2020年7月15日に発売されています。
2026年にも再上映の機会があった岩井俊二の作品を紹介する公式企画ページには、『ラストレター』の2026年3月21日・23日・26日の上映スケジュールが掲載されています。
上映館として、TOHOシネマズ日比谷、ミッドランドスクエア シネマ、大阪ステーションシティシネマ、T・ジョイ博多が案内されました。
公開から6年を経ても、劇場で再び鑑賞する機会が設けられていることは、作品の魅力を振り返るうえで興味深い動きです。
【よくある質問】映画『ラストレター』に関するFAQ
Q1:映画『ラストレター』の上映時間と公開日は?
A1:2020年1月17日公開で、上映時間は121分です。監督・脚本・編集は岩井俊二が担当しています。
Q2:未咲はなぜ亡くなったのですか?
A2:未咲は阿藤との苦しい関係を経て心を病み、最終的に自ら命を絶ちました。物語の後半で裕里が鏡史郎に事情を説明することで、未咲の人生の真相が明らかになります。
Q3:『ラストレター』は『Love Letter』の続編ですか?
A3:物語が直接つながる続編ではありません。ただし、手紙を中心にした物語構成や演出、出演者などに共通点があります。岩井俊二監督自身も『Love Letter』を意識したセルフリブートとしての位置づけを語っています。
映画『ラストレター』は、姉・未咲の死をきっかけに、裕里と鏡史郎の初恋、鮎美が知らなかった母の青春、そして世代を超えて受け継がれる思いを描いた作品です。
松たか子と福山雅治による大人の恋愛、広瀬すずと森七菜が表現する青春時代、神木隆之介による若き日の鏡史郎。それぞれの人物が交差することで、一つの手紙が持つ意味が少しずつ変わっていきます。
作品をより深く楽しむための判断基準は、次の3点です。
- 初恋や青春の記憶をテーマにした映画が好きな人: 特におすすめ。過去と現在を行き来する演出が楽しめます。
- 岩井俊二作品のファン: 『Love Letter』との共通点や映像表現の変化に注目すると、さらに楽しめます。
- 分かりやすい恋愛の結末を求める人: 複数の人物の思いや手紙が交差するため、ゆっくり物語を追う姿勢が必要です。
本作の本当の主役は、裕里でも鏡史郎でもなく、時を超えて人から人へ渡っていく手紙なの可能性があります。
亡くなった人の言葉は戻ってきません。しかし、残された手紙を読むことで、その人が何を考え、何を願い、どんな未来を思い描いていたのかを知ることはできます。
121分の物語を見終えた後、未咲が鮎美に残した最後の手紙を思い返すと、作品のタイトル『ラストレター』に込められた意味が、より深く胸に残ります。
主な参考資料:日本映画データベース(JFDB)、せんだい・宮城フィルムコミッション、文藝春秋BOOKS、ソニーミュージック、SWITCH ONLINE、Filmarks、映画.com、岩井俊二公式作品情報。