在日韓国人とは、朝鮮半島にルーツを持ち、日本で生活する人々を指す言葉です。日本の植民地支配期に渡日した人々とその子孫を中心に形成されてきましたが、現在では世代交代や国籍の変更、帰化、国際結婚などによって、その背景やアイデンティティは多様化しています。
2026年現在、出入国在留管理庁が公表した2025年末の統計では、在留カードや特別永住者証明書の国籍・地域欄に「韓国」と記載されている人は407,341人です。ただし、この数字が在日コリアン全体の人数を示すわけではありません。在日韓国人と在日朝鮮人の違い、韓国籍と朝鮮籍の意味、特別永住者制度の歴史を理解するには、国籍・民族的ルーツ・在留資格を分けて考える必要があります。
【基本知識】在日韓国人とは?在日コリアンとの違いをわかりやすく解説

在日韓国人という言葉を理解するためには、まず「国籍」と「民族的なルーツ」を区別することが大切です。
在日韓国人の基本的な意味一般的に在日韓国人とは、韓国籍を持ち、日本に居住している人々を指します。歴史的な文脈では、朝鮮半島から日本に渡り、戦後も日本に定住した人々とその子孫を指す意味で使われることもあります。
ただし、在日韓国人という言葉には、法律上の国籍を基準とする使い方と、朝鮮半島にルーツを持つ人々を広く表す使い方があります。そのため、使用される場面によって対象範囲が異なります。
たとえば、韓国籍を持つ人だけでなく、日本国籍を取得した人や、韓国籍・朝鮮籍の区分とは異なる形で民族的なつながりを持つ人まで含めて語られる場合もあります。
在日コリアンとは何か在日コリアンは、韓国籍や朝鮮籍といった政治的・法的な区分だけに限定せず、日本に暮らす朝鮮半島にルーツを持つ人々を広く表す呼称です。
JICA緒方研究所が2023年4月に掲載した「現代を生きる在日朝鮮人の民族経験」では、神戸学院大学の李洪章准教授による講演を通じて、こうした呼称の違いが解説されています。
同講演では、「在日コリアン」は渡日の背景や国籍を限定せず、日本に住むコリアンを広く表す呼称として説明されています。南北分断や歴史的な政治対立を超えて、共通するルーツを表現できる言葉として使われています。
一方、在日朝鮮人という呼称には、植民地支配や朝鮮半島の分断など、歴史的な経緯を重視する意味合いが込められる場合があります。
3つの呼称の違いそれぞれの言葉の一般的な使われ方を整理すると、次のようになります。
- 在日韓国人:韓国籍を持つ人、または韓国にルーツを持ち日本で暮らす人を指す。
- 在日朝鮮人:朝鮮半島にルーツを持つ人々を歴史的・民族的な観点から表す呼称。
- 在日コリアン:国籍や政治的立場を限定せず、朝鮮半島にルーツを持つ人々を包括的に表す呼称。
また、行政や公的な説明では「在日韓国・朝鮮人」という表現も使われます。
重要なのは、これらの呼称が必ずしも同じ意味ではなく、本人がどの言葉を選ぶかによっても意味合いが変わることです。個人のアイデンティティを尊重するためにも、呼称を一律に決めつけない姿勢が大切です。
【国籍の違い】在日韓国人と在日朝鮮人、韓国籍と朝鮮籍は何が違う?
在日韓国人について調べる際、特に混乱しやすいのが「韓国籍」と「朝鮮籍」の違いです。
この2つは同じものではありません。特に朝鮮籍については、北朝鮮の国籍を意味するものだと誤解されることがありますが、歴史的な制度を理解すると、その違いが明確になります。
韓国籍とは韓国籍とは、大韓民国の国籍を持っていることを意味します。法律上、韓国という国家との国籍上のつながりがある状態です。
日本に住んでいる韓国籍の人には、植民地支配期から日本に生活基盤を築いてきた人々の子孫だけでなく、戦後に韓国から来日した人や、その後に移住した人々も含まれます。
したがって、韓国籍の在留者全員が、歴史的な意味での在日韓国人の子孫というわけではありません。
朝鮮籍とは北朝鮮の国籍なのか朝鮮籍は、北朝鮮の国籍と同じ意味ではありません。
この点については、2008年4月8日の参議院議員提出質問に対する政府答弁書が重要な根拠になります。
政府答弁では、外国人登録における「韓国」の記載は国籍を表示する一方、「朝鮮」の記載は朝鮮半島出身者を示すものであり、特定の国家の国籍を表示するものではないと説明されています。
つまり、朝鮮籍は大韓民国の国籍でも、朝鮮民主主義人民共和国の国籍でもありません。
日本の歴史的な外国人登録制度に由来する表記であり、朝鮮半島にルーツを持ちながら韓国籍を取得していない人々などに関係する区分です。
なぜ朝鮮籍のまま生活する人がいるのか朝鮮籍を維持する背景には、個人によって異なる歴史的・政治的・社会的な事情があります。
JICA緒方研究所の2023年の講演記録では、韓国籍への変更を求める動きに対する抵抗や、朝鮮半島の南北分断体制への批判などが、朝鮮籍を維持する理由として紹介されています。
また、家族の歴史や民族的な帰属意識、政治的な考え方などが複雑に関係する場合もあります。
朝鮮籍であるという理由だけで、北朝鮮への政治的支持や特定の思想を持っていると判断することはできません。
韓国籍・朝鮮籍・日本国籍の比較- 韓国籍:大韓民国の国籍を持つ状態。
- 朝鮮籍:日本の歴史的な登録制度に由来する表記で、特定の国家の国籍を示すものではない。
- 日本国籍:日本の国籍法に基づく日本国民としての法的地位。
民族的なルーツと国籍は別の概念です。韓国にルーツを持ちながら日本国籍を取得している人もいれば、韓国籍を持ちながら日本で生まれ育った人もいます。
【歴史と年表】在日韓国人はなぜ日本に住むようになったのか?
在日韓国人・在日朝鮮人の歴史を理解するうえで欠かせないのが、日本による朝鮮半島の植民地支配です。
現在の在日コリアン社会は、単純な外国人移住によって形成されたものではありません。植民地支配、経済的な移動、戦時動員、終戦後の帰国と残留、そして戦後の国籍制度の変化が重なって形成されました。
1910年の韓国併合と日本への渡日1910年、日本は韓国併合を行い、朝鮮半島は日本の植民地支配下に置かれました。
この時期から朝鮮半島から日本への人の移動が本格化します。
JICA緒方研究所の講演記録では、渡日の背景として主に3つの要因が説明されています。
- 経済的要因:土地制度の変化や産米増殖計画などの影響を受け、農村で生活基盤を失った人々が仕事を求めて日本へ移動した。
- 文化的要因:日本語教育や日本の近代教育を通じて、日本への移動に伴う言語的・心理的な障壁が変化した。
- 社会的要因:朝鮮半島で教育を受けても十分な就業機会を得られず、より多くの仕事を求めて渡日する人が増えた。
その後、1939年以降は戦時下の強制動員・強制労働によって、日本に暮らす朝鮮人の人口がさらに増加しました。
1945年の終戦と日本に残った人々1945年8月、日本の敗戦によって朝鮮半島は植民地支配から解放されました。
しかし、すべての人がすぐに朝鮮半島へ戻ったわけではありません。
JICAの講演記録によると、1945年には日本に暮らす朝鮮人の人口は約210万人に達していました。終戦後の1946年3月までに、主に強制連行・強制労働によって渡日していた約140万人が帰国した一方、約60万人は日本に残りました。
残留した人々の中には、すでに日本で家族を築いていた人や、仕事・生活の基盤が日本にあった人もいました。
こうして日本に残った人々とその子孫が、現在の在日コリアン社会の歴史的な基盤を形成していきます。
在日韓国人の歴史を理解する重要年表| 年代 | 主な出来事 | 在日コリアンへの影響 |
|---|---|---|
| 1910年 | 韓国併合 | 植民地支配下で朝鮮半島から日本への渡日が本格化する。 |
| 1939~1945年 | 戦時動員・強制労働 | 戦時下の動員によって日本に暮らす朝鮮人が増加する。 |
| 1945年 | 日本の敗戦と朝鮮半島の解放 | 帰国する人々と日本に残留する人々に分かれる。 |
| 1947年 | 外国人登録令の施行 | 旧植民地出身者が外国人として扱われる制度が始まる。 |
| 1952年 | サンフランシスコ平和条約発効 | 旧植民地出身者は日本国籍を喪失する。 |
| 1965年 | 日韓基本条約締結 | 日韓国交正常化と法的地位協定によって韓国籍者の法的地位が整備される。 |
| 1991年 | 入管特例法施行 | 特別永住者制度が創設される。 |
| 2012年 | 新しい在留管理制度の導入 | 外国人登録制度が廃止され、特別永住者証明書の制度に移行する。 |
| 2025年末 | 在留外国人数の最新年末統計 | 国籍・地域欄が韓国の在留者は407,341人となる。 |
この年表から分かるのは、在日コリアンの歴史が、単なる移住の歴史ではなく、日本の植民地政策や戦後の国籍制度と密接に結びついていることです。
1952年に日本国籍を失った背景戦後の大きな転換点となったのが、1952年4月28日のサンフランシスコ平和条約発効です。
日本政府は平和条約の発効に伴い、朝鮮半島出身者など旧植民地出身者について、日本国籍を喪失する扱いを取りました。
この結果、日本で生まれ育った人々も、本人の意思とは関係なく外国人として扱われることになりました。
その後、1965年の日韓基本条約と法的地位協定によって、韓国籍を取得した人々の永住に関する法的な枠組みが整えられました。
一方、朝鮮籍を維持する人々も存在し、韓国籍と朝鮮籍の区分は在日社会の中に残り続けました。
【在留資格の仕組み】特別永住者とは?一般永住者・日本国籍との違い
在日韓国人について理解するうえで、もう一つ重要な制度が「特別永住者」です。
特別永住者とは、戦前から日本に居住し、1952年の平和条約発効によって日本国籍を離脱した人々と、その一定の子孫などを対象に設けられた特別な法的地位です。
特別永住者制度が誕生した理由特別永住者制度は、1991年に施行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」、いわゆる入管特例法によって創設されました。
2024年2月28日の衆議院予算委員会第三分科会でも、政府参考人が制度の成立背景について説明しています。
その説明によれば、対象となったのは、終戦前から日本に引き続き居住し、平和条約発効によって日本国籍を離脱した在日韓国・朝鮮人や台湾人と、その子孫です。
日本社会への定着性が強まっていたことを踏まえ、安定した生活を営めるように法的地位を整備することが制度創設の目的でした。
特別永住者と一般永住者の違い特別永住者と一般永住者は、どちらも日本で長期的に生活できる法的地位ですが、根拠となる法律や対象者が異なります。
- 特別永住者:歴史的経緯を背景として、入管特例法に基づき認められる地位。
- 一般永住者:出入国管理及び難民認定法に基づき、一定の要件を満たした外国人に認められる在留資格。
- 日本国籍保持者:日本の国籍法に基づく日本国民であり、外国人としての在留資格を必要としない。
特別永住者は、日本での滞在期間に通常の在留資格のような期限が設けられていないなど、一般の外国人在留制度とは異なる特例が適用されます。
また、2012年7月9日の新しい在留管理制度の導入に伴い、外国人登録法が廃止されました。現在は、特別永住者証明書によってその法的地位を証明する仕組みになっています。
特別永住者なら韓国籍なのか特別永住者という言葉は、国籍ではなく在留上の法的地位を示しています。
そのため、特別永住者であることと韓国籍を持っていることは、必ずしも同じではありません。
特別永住者には韓国籍の人だけでなく、朝鮮籍の人なども含まれます。また、制度の歴史的な対象には台湾にルーツを持つ人々とその子孫も含まれています。
つまり、特別永住者という制度を韓国籍の人だけに限定して理解するのは正確ではありません。
【2026年最新データ】在日韓国人は何人いる?407,341人の統計を検証
2026年に在日韓国人の人数を確認する際、基準となるのが出入国在留管理庁の2025年末現在の在留外国人数です。
2025年末の韓国籍・地域の在留者は407,341人出入国在留管理庁の公表資料によると、2025年末時点で在留カードまたは特別永住者証明書の国籍・地域欄に「韓国」と表記されている人は、407,341人でした。
前年末と比べると1,897人減少しています。
国籍・地域別では中国、ベトナムに次ぐ第3位です。また、同時点の在留外国人総数は4,125,395人で、日本に暮らす外国人全体の中でも韓国籍の人々は大きな割合を占めています。
2022年6月の約44万人という数字との違い在日韓人歴史資料館のQ&Aでは、2022年6月時点の韓国籍と朝鮮籍の人数について、次のような数字が紹介されています。
- 韓国籍:約41万人
- 朝鮮籍:約3万人
- 合計:約44万人
- 特別永住者:約29万人
- 特別永住者の割合:約66%
このデータは、在日韓国・朝鮮人の歴史的な背景を理解するうえで参考になります。
ただし、これは2022年6月時点の数字です。2025年末の韓国籍・地域407,341人とは、集計時点や対象範囲が異なります。
2025年末の数字を2022年の韓国籍・朝鮮籍の合計と直接比較し、在日コリアン全体が何人増減したと判断することはできません。
2025年末の特別永住者は266,896人出入国在留管理庁によると、2025年末の特別永住者の総数は266,896人です。
ここで注意したいのは、この266,896人は特別永住者全体の人数であり、韓国籍者だけの人数ではないことです。
2022年の在日韓人歴史資料館の資料にある約29万人という数字と、2025年末の266,896人という数字は、時点や統計の対象範囲を確認して読み取る必要があります。
2026年に人数データを見る際の注意点在日韓国人の人数を調べるときには、次の3つを区別が必要です。
- 韓国籍・地域の在留者数:日本の在留管理統計で韓国と記載されている人の数。
- 朝鮮籍の人々:歴史的な登録表記に関係する人々で、韓国籍の統計とは別に考える必要がある。
- 民族的なルーツを持つ日本国籍者:帰化や親の国籍などによって日本国籍を持つ人々で、外国人の在留者数には含まれない。
したがって、407,341人という数字は、朝鮮半島にルーツを持つ人々全体の人口を表すものではありません。
統計の数字だけでは把握できない人々がいることも、在日コリアン社会の実態を理解するうえで押さえておきたい点です。
【現在の暮らしとアイデンティティ】在日韓国人の世代交代・帰化・民族的ルーツ
現在の在日コリアン社会は、植民地支配期に日本へ渡った1世と、その子どもや孫、さらにその下の世代では、生活環境や文化的な経験が大きく異なります。
世代交代が進んだことで、国籍、使用する言語、名前、文化的な習慣、民族的な自己認識も多様になっています。
1世から5世・6世へと進む世代交代在日コリアンの世代は、一般的に次のように整理されます。
- 1世:朝鮮半島で生まれ、日本へ渡って生活した世代。
- 2世:日本で生まれた、または幼少期に渡日した1世の子どもの世代。
- 3世:日本で生まれ育った2世の子どもの世代。
- 4世以降:日本で生活基盤を築いた家族の中で生まれ育った世代。
現在では5世や6世に当たる世代も生まれています。
1世の中には朝鮮半島の言語や文化を日常的に使っていた人が多くいましたが、日本で生まれ育った世代では、日本語を母語として生活する人が一般的になっています。
ただし、世代が進めば民族的なアイデンティティが必ず薄れるというわけではありません。家庭の文化、民族教育、地域社会とのつながり、個人の経験によって大きく異なります。
日本国籍を取得した在日コリアンもいる在日コリアンの中には、日本への帰化によって日本国籍を取得した人もいます。
法務省の国籍Q&Aによると、帰化とは、日本国籍を持たない外国人が法務大臣の許可を受けて日本国籍を取得する制度です。
帰化後は日本国籍を持つ日本国民となるため、外国人の在留者数には含まれません。
しかし、日本国籍を取得したからといって、朝鮮半島にルーツを持つという家族の歴史や文化的な背景までなくなるわけではありません。
日本国籍を持ちながら、自分を在日コリアンと認識している人もいます。
国籍と民族的アイデンティティは一致しない在日コリアンのアイデンティティを考える際に重要なのは、国籍だけで個人の帰属意識を判断できないという点です。
例えば、次のような人々が存在します。
- 韓国籍を持ち、日本で生まれ育った人。
- 朝鮮籍を持ち、日本社会で生活している人。
- 日本国籍を取得しながら、韓国や朝鮮半島にルーツを持つことを大切にしている人。
- 民族的なルーツを持つ一方、日常生活では日本人としての意識が強い人。
- 複数の文化や国とのつながりを自分のアイデンティティとしている人。
JICA緒方研究所の講演記録でも、在日朝鮮人の民族的な経験を単純な同化か異化かという二択で説明することの難しさが指摘されています。
一人の中に日本社会とのつながり、朝鮮半島への関心、家族から受け継いだ文化などが共存する場合もあります。
そのため、在日コリアンを一つの価値観や政治的立場でまとめることはできません。
日本社会で暮らす在日コリアンの現在現在の在日コリアンは、教育、経済、文化、芸術、スポーツ、地域活動など、さまざまな分野で日本社会に関わっています。
一方、歴史的な差別や偏見、民族的なルーツをめぐる葛藤、国籍や名前に関する悩みなどが、個人や家庭によって経験されることもあります。
在日コリアンの生活を理解するには、国籍の数字だけでなく、世代や家庭環境、地域社会との関係にも目を向ける必要があります。
【理解を深める資料】在日韓人歴史資料館とJICAの研究から見える実像
在日韓国人や在日朝鮮人について、歴史的な背景をさらに詳しく知りたい場合には、当事者団体の資料や公的機関の研究記録が役立ちます。
在日韓人歴史資料館とは在日韓人歴史資料館は、在日コリアンの歴史を伝えるための資料館です。
展示や資料では、日本による植民地支配期から戦後、そして現在に至るまでの在日コリアンの歩みが取り上げられています。
具体的には、次のようなテーマが扱われています。
- 朝鮮半島から日本への渡航の歴史。
- 関釜連絡船と日本への移動。
- 植民地支配期の社会運動や民族教育。
- 戦時下の強制連行・強制労働。
- 関東大震災時の朝鮮人の受難。
- 終戦後の帰国と日本に残った人々の生活。
- 外国人登録制度や人権運動の歴史。
特に、現在の在日コリアン社会がどのような歴史的背景から形成されたのかを理解するための資料として重要です。
JICA「現代を生きる在日朝鮮人の民族経験」JICA緒方研究所は2023年4月、オンライン講座「移住史・多文化理解オンライン講座」の第4回として、「現代を生きる在日朝鮮人の民族経験」に関する講演記録を公開しました。
講演では、神戸学院大学の李洪章准教授が、在日朝鮮人の歴史や民族的な経験、世代による意識の違いについて説明しています。
特に注目されるのは、在日コリアンを単純に日本人か朝鮮人か、南か北かという二分法で理解することの限界です。
日本で生まれ育った人であっても、祖父母や両親から受け継いだ歴史や文化に対する思いは一人ひとり異なります。
また、民族的な帰属意識と政治的な立場が必ずしも一致するわけではありません。
こうした研究は、在日韓国人や在日朝鮮人を単なる統計上の集団ではなく、個別の生活史を持つ人々として理解するための重要な手がかりになります。
【プロの結論】在日韓国人を理解するために知っておきたい3つの判断基準
在日韓国人という言葉には、歴史、国籍、在留資格、民族的なルーツ、個人のアイデンティティという複数の意味が関係しています。
そのため、インターネット上の情報や統計を見る際には、次の3つの基準を意識することが大切です。
1. 国籍と民族的ルーツを混同しない韓国籍を持っていることと、朝鮮半島にルーツを持っていることは同じ意味ではありません。
日本国籍を持つ在日コリアンもいれば、韓国籍を持つ新しい移住者もいます。国籍だけで民族的な背景や本人の自己認識を判断することはできません。
2. 在留資格と国籍を別々に考える特別永住者は国籍ではなく、日本に滞在するための法的地位です。
韓国籍と特別永住者を同じ意味で扱ったり、特別永住者であることだけで韓国籍だと判断したりするのは誤りです。
3. 人数統計の対象範囲と集計時点を確認する2025年末の韓国籍・地域407,341人という数字は、出入国在留管理庁が公表した在留管理上の統計です。
日本国籍を取得した人や、民族的なルーツを持ちながら外国人統計に含まれない人まで把握するものではありません。
また、2022年の韓国籍・朝鮮籍の合計約44万人という数字と比較する場合も、集計時点や対象範囲の違いを考慮する必要があります。
在日韓国人を正しく理解するには、数字だけで結論を出すのではなく、その背景にある歴史や制度、個人の生活にも目を向けることが重要です。
在日韓国人とは?に関するよくある質問(FAQ)
Q1:在日韓国人と在日朝鮮人は同じ意味ですか?
A1:必ずしも同じではありません。在日韓国人は韓国籍を持つ人を指す場合が多く、在日朝鮮人は歴史的・民族的な背景を重視した呼称として使われます。ただし、文脈や本人の自己認識によって意味が異なる場合があります。
Q2:朝鮮籍は北朝鮮の国籍という意味ですか?
A2:いいえ。朝鮮籍は日本の歴史的な外国人登録制度に由来する表記で、北朝鮮の国籍を直接示すものではありません。2008年の政府答弁書でも、朝鮮という表記は特定の国家の国籍を表示するものではないと説明されています。
Q3:在日韓国人は2026年現在何人いますか?
A3:2025年末の出入国在留管理庁の統計では、国籍・地域欄が韓国の在留者は407,341人です。ただし、この数字は在日コリアン全体の人口ではなく、日本国籍を取得した人や朝鮮籍の人々などは別に考える必要があります。
Q4:特別永住者とは何ですか?
A4:1991年施行の入管特例法によって設けられた法的地位です。主に戦前から日本に居住し、1952年の平和条約発効によって日本国籍を離脱した人々と、その一定の子孫などを対象としています。国籍ではなく在留上の地位です。
Q5:在日韓国人が日本国籍を取得することはできますか?
A5:できます。日本の国籍法に基づき、一定の条件を満たして法務大臣の許可を受ければ帰化によって日本国籍を取得できます。日本国籍を取得した後も、朝鮮半島にルーツを持つという民族的・文化的な背景がなくなるわけではありません。
Q6:在日コリアンと在日韓国人はどう使い分ければよいですか?
A6:韓国籍という法的な国籍を明確に示したい場合は在日韓国人、韓国籍・朝鮮籍・日本国籍などを問わず朝鮮半島にルーツを持つ人々を広く表現したい場合は在日コリアンが適しています。個人について言及するときは、本人が希望する呼称を尊重することが大切です。
在日韓国人とは、朝鮮半島にルーツを持ち、日本で暮らす人々を指す言葉です。その歴史は1910年の韓国併合に始まる植民地支配期の渡日、1939年以降の戦時動員、1945年の終戦後の残留、1952年の日本国籍喪失、1965年の日韓基本条約、1991年の特別永住者制度の創設へとつながっています。
2025年末の統計では、韓国籍・地域の在留者は407,341人、特別永住者全体は266,896人です。ただし、これらの数字は対象範囲が異なり、在日コリアン全体の民族的な人口を示すものではありません。
また、韓国籍と朝鮮籍は異なり、朝鮮籍は北朝鮮の国籍を意味するものではありません。特別永住者も国籍ではなく、歴史的な経緯に基づく在留上の法的地位です。
世代交代が進んだ現在、在日コリアンの中には韓国籍、朝鮮籍、日本国籍を持つ人々が暮らし、それぞれ異なる文化的背景やアイデンティティを形成しています。
在日韓国人を理解するために必要なのは、国籍や人数だけで人々を分類することではありません。日本と朝鮮半島の歴史的な関係を知り、制度の違いを正確に理解し、一人ひとりの多様な生活や自己認識を尊重することです。
それが、2026年の日本社会において在日コリアンの歴史と現在を正しく理解するための出発点になります。
主な根拠資料・統計
- 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」
- JICA緒方研究所「現代を生きる在日朝鮮人の民族経験」(2023年4月13日)
- 参議院「在日韓国・朝鮮人の『国籍』の表記に関する質問に対する答弁書」(2008年4月8日)
- 衆議院「第213回国会 予算委員会第三分科会」(2024年2月28日)
- 法務省「国籍Q&A」「特別永住者の制度について」