妊娠が分かってからも吐き気や嘔吐がほとんどなく、「自分だけつわりがないのはなぜ?」「赤ちゃんは順調に育っているの?」と不安になる人は少なくありません。実際、つわりには大きな個人差があり、妊娠しても症状がほとんど現れない人や、日常生活に影響しない程度で過ごせる人もいます。
2026年現在、つわりの発症には妊娠に伴うホルモンの変化だけでなく、胎児・胎盤由来の物質と母体側の感受性が関係することも研究で明らかになってきました。この記事では、つわりがない人に見られる傾向、体質との関係、最新の医学研究、流産との関係、ネットで広がる噂の真相、医療機関を受診する目安まで詳しく解説します。
【2026年最新】つわりがない人の特徴とは?実際にどんな人がいる?

つわりがない人には、いくつかの症状の現れ方の傾向があります。ただし、医学的に特定の体質や性格を持つ人だけがつわりを経験しないと証明されているわけではありません。
1. 妊娠初期から吐き気や嘔吐がほとんどない代表的なのは、妊娠が判明した後も吐き気や嘔吐をほとんど感じないケースです。
一般的につわりは妊娠5〜6週頃から始まり、妊娠12〜16週頃に落ち着くことが多いとされています。しかし、すべての妊婦に同じ変化が起こるわけではありません。
妊娠初期から食事を普段どおりに取れたり、朝起きたときにも気分が悪くならなかったりする人もいます。こうした違いは妊娠に伴う身体の反応の個人差によるものです。
2. 吐き気以外の妊娠症状も軽いつわりがない人の中には、吐き気だけでなく、食欲不振やにおいへの敏感さ、胃の不快感なども目立たない人がいます。
ただし、吐き気がないことと妊娠に伴う身体の変化がないことは同じではありません。眠気、疲れやすさ、胸の張り、頻尿、便秘など、別の症状が現れる場合もあります。
つまり、吐き気がないからといって、妊娠による身体の変化が起きていないわけではありません。
3. つわりがあっても日常生活に影響しない程度本人は「つわりがない」と感じていても、実際には軽い症状が出ていることがあります。
例えば、以前より少し疲れやすい、空腹時に軽く気持ち悪くなる、特定のにおいが苦手になったといった変化です。
つわりは、激しい嘔吐だけを指すものではありません。症状の種類や程度によって、本人の感じ方も変わります。
4. 妊娠ごとに症状の現れ方が違う1人目の妊娠ではつわりがなかったのに、2人目では強い吐き気が出るケースもあります。反対に、最初の妊娠でつらいつわりを経験し、次の妊娠ではほとんど症状がなかったという人もいます。
仙台赤十字病院が2025年4月7日に公開した産婦人科の解説でも、妊娠ごとにつわりの程度が異なることが紹介されています。
妊娠経験があるからといって、次の妊娠でも同じ経過になるとは限りません。
【体質と原因】つわりがない人はなぜ?ホルモンと遺伝的要因を解説
つわりの発症には妊娠に伴うホルモン変化が関係しています。しかし、なぜ症状が強く出る人とほとんど出ない人がいるのか、その仕組みは一つの原因だけでは説明できません。
hCGなど妊娠に伴うホルモン変化つわりとの関連が以前から研究されている物質の一つが、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)です。
hCGは妊娠成立後に胎盤のもととなる組織から分泌されるホルモンで、妊娠初期に増加します。その変動する時期とつわりが現れやすい時期が重なることなどから、発症との関連が指摘されてきました。
厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」でも、hCGとつわりの関係が解説されています。
ただし、hCGの数値だけで、つわりがあるかどうかや症状の強さを個人単位で予測することはできません。
注目されるGDF15という物質つわりの原因を考えるうえで、近年の研究で注目されているのがGDF15です。
GDF15は、脳幹に作用するタンパク質の一種です。妊娠中には胎児・胎盤側から母体の血液中に供給され、その量や母体の感受性が吐き気や嘔吐の程度に関係すると考えられています。
2023年12月13日、国際的な科学誌「Nature」に関連研究が発表され、2024年1月には正式な論文として掲載されました。
この研究では、妊娠中のGDF15濃度が高い人ほど吐き気や嘔吐を経験しやすい傾向が確認されました。また、妊娠前からのGDF15への曝露や母体側の感受性も、妊娠悪阻のリスクに関係することが示されています。
重要なのは、単純にホルモンの量だけで症状が決まるわけではないという点です。身体がその物質にどの程度反応するかも関係している可能性があります。
この研究は、つわりの個人差を理解するうえで大きな進展です。ただし、GDF15を測定すれば、つわりの有無や妊娠経過を確実に判断できるという段階には至っていません。
遺伝や体質も関係する?遺伝的な違いがつわりの程度に関係する可能性も研究されています。
Natureに掲載された研究では、GDF15に関係する遺伝的な特徴と妊娠悪阻のリスクとの関連が検討されました。母体側だけでなく、胎児側の遺伝的要因も関係する可能性が示されています。
ただし、特定の遺伝子を持っていれば必ずつわりがない、あるいは必ず重症になるという単純な関係ではありません。
2026年時点でも、個人のつわりの有無を遺伝子だけで説明することはできず、複数の要因が関係する現象として研究が続いています。
つわりの程度には幅があります。ここでは、医学的に知られている関連要因と、その意味を整理します。
| 関連する要素 | 医学的に分かっていること | つわりとの関係 |
|---|---|---|
| hCG | 妊娠初期に増加するホルモン | つわりとの関連が以前から指摘されている |
| GDF15 | 胎児・胎盤側が主な供給源となる物質 | 血中濃度と吐き気・嘔吐の程度に関連が認められている |
| 母体の感受性 | ホルモンなどの物質に対する反応の違い | 症状の強さを左右する要因の一つと考えられている |
| 遺伝的要因 | GDF15関連遺伝子などの違い | 妊娠悪阻のリスクとの関連が研究されている |
| 妊娠週数 | 妊娠初期に症状が出やすい | 妊娠5〜6週頃から始まり、12〜16週頃に軽快する人が多い |
| 妊娠ごとの違い | 同じ人でも妊娠ごとに経過が異なる | 1人目と2人目で症状が変わる場合がある |
この比較から分かるのは、つわりの程度が単純な体力や健康状態の優劣で決まるわけではないということです。
また、つわりがある人とない人の間で、胎児の健康状態に優劣があると判断することもできません。
【噂の真相】つわりがないと流産する?ネットの反応や誤解を検証
つわりがない人が不安を感じやすい理由の一つに、インターネット上で見られる情報があります。
妊娠に関する掲示板やSNSでは、つわりの重さを比較したり、症状が急になくなったことを心配したりする話題が生まれやすいものです。一方で、医学的な裏付けが十分でない情報も混在しています。
噂1:つわりがない人は流産しやすい?つわりがないという理由だけで、流産の可能性が高いと判断することはできません。
つわりの有無は妊娠経過を判断するための確実な指標ではありません。吐き気がないまま妊娠が順調に進むケースもあります。
一方、つわりがあるからといって流産の可能性がなくなるわけでもありません。
妊娠経過を確認するには、超音波検査などの医学的な評価が必要です。つわりの有無だけを根拠に安心したり、不安になったりする必要はありません。
噂2:つわりがない人は体が丈夫で健康?これも正確な説明ではありません。
つわりが軽い人が、必ずしも体力に優れている、免疫力が高い、健康状態が良好というわけではありません。
妊娠中の体調は、つわりだけでは判断できません。貧血や血圧、血糖値、胎児の発育など、別の観点から確認する必要があります。
噂3:つわりがないのは男の子を妊娠しているから?つわりの有無だけで胎児の性別を判断することはできません。
性別とつわりの程度について研究はありますが、個人の妊娠において、症状から性別を確実に予測できる医学的な方法は確立されていません。
「男の子だからつわりがない」「女の子だから吐き気が強い」といった言い伝えは、医学的な判定方法とは区別する必要があります。
ネットの反応や炎上につながりやすい理由つわりの話題では、症状が軽い人への羨望や、重い症状に苦しむ人との比較が起こりやすくなります。
特に「つわりがないのは妊娠が順調な証拠」「つわりが重いほど赤ちゃんが元気」といった断定的な情報は、医学的な誤解を生みやすいものです。
こうした話題がSNSで拡散されれば、妊娠中の人同士の比較や不安につながり、投稿の内容によっては炎上のきっかけにもなります。
しかし、ネット上の体験談は個人の経験であり、すべての妊婦に当てはまる医学的な基準ではありません。投稿の人気や共感の多さと、情報の正確さは別の問題です。
【妊娠中の注意点】つわりがない人が確認したい受診目安と過ごし方
つわりがないこと自体を理由に、特別な治療を受ける必要は通常ありません。ただし、妊娠中は症状の有無にかかわらず、身体の変化を確認していくことが大切です。
定期的な妊婦健診を欠かさないつわりがないと体調が良く感じられ、妊娠前と同じように過ごせる人もいます。しかし、自覚症状だけでは胎児の発育や母体の状態を正確に判断できません。
妊婦健診では、超音波検査や血圧測定、尿検査などを通じて、妊娠経過を確認します。
こども家庭庁の妊娠・出産に関する情報サイトでも、定期的な妊婦健診を受けることと、異変を感じた場合には担当医や助産師に相談することが案内されています。
こんな症状がある場合は早めに相談つわりの有無とは別に、次のような症状がある場合は注意が必要です。
- 性器出血がある
- 強い下腹部痛がある
- 腹痛や張りが続いている
- 発熱や強い体調不良がある
- めまいや意識が遠のくような症状がある
特に出血や強い腹痛がある場合は、つわりがなくても医療機関に連絡し、受診の必要性を確認してください。大量の出血や激しい痛み、意識障害などがある場合は、速やかに救急医療につなげる必要があります。
つわりがない場合も普段の健康管理を続ける症状が軽い人は、食事や睡眠などの生活習慣を整えながら過ごしましょう。
妊娠中に必要な栄養を意識し、無理のない範囲で身体を動かし、十分な休息を取ることが基本です。妊婦健診で指示された生活上の注意点も守りましょう。
また、つわりがないからといって、仕事や家事を無理に増やす必要はありません。妊娠中は自覚症状が少なくても疲れやすくなることがあります。
【プロの結論】つわりがない人の特徴を知るうえで大切な3つの判断基準
つわりがない人について理解する際には、次の3つの視点を押さえておくことが大切です。
第一に、つわりの有無は個人差が大きいということ。妊娠しても吐き気や嘔吐がほとんどない人は存在し、それだけで異常と判断する必要はありません。
第二に、つわりの原因は単一ではないということ。hCGなどのホルモン、GDF15、遺伝的要因、母体の感受性など、複数の要素が関係しています。体力や性格などの単純な特徴だけで説明できるものではありません。
第三に、妊娠の順調さはつわりではなく医学的な検査で確認するということ。症状がないことを過度に心配する必要はありませんが、定期健診を受けることは欠かせません。
特に、つわりがない人とある人を比較して、どちらが健康なのかを判断する考え方には注意が必要です。妊娠中の身体の反応は一人ひとり違います。
つわりがない人の特徴に関するよくある質問(FAQ)
Q1:つわりがまったくない人は何割くらいいますか?
A1:こども家庭庁の情報では、つわりは妊娠初期の半数以上に見られる一般的な症状とされています。医学資料では経験する人の割合を50〜80%程度とするものもあります。ただし、調査方法や症状の定義によって差があり、つわりが全くない人の割合を一律に確定することはできません。
Q2:つわりがないと赤ちゃんに何か問題がありますか?
A2:つわりがないことだけで赤ちゃんに問題があるとは判断できません。つわりがなくても順調に妊娠が進むケースはあります。赤ちゃんの発育については、妊婦健診や超音波検査で確認してください。
Q3:つわりが途中で急になくなった場合は流産の可能性がありますか?
A3:つわりの症状には波があり、自然に軽くなることもあります。症状がなくなっただけで流産と判断することはできません。ただし、出血や強い腹痛などが伴う場合は、早めに産婦人科へ連絡してください。不安が続く場合も、健診を待たずに担当医へ相談すると安心です。
つわりがない人には、妊娠初期から吐き気がほとんどない人、症状が軽い人、妊娠ごとに症状の違いがある人など、さまざまなケースがあります。
その背景には、hCGやGDF15などのホルモン・生理活性物質、母体の感受性、遺伝的要因などが関係していると考えられています。
2026年現在も研究は進んでいますが、つわりがない人に共通する決定的な体質や特徴は確立されていません。また、つわりがないことだけで流産や胎児の異常を判断することもできません。
大切なのは、周囲の妊婦と症状を比較することではなく、自分の身体の状態を把握し、定期的に妊婦健診を受けることです。出血や腹痛など気になる症状があれば、早めに医療機関へ相談しましょう。
つわりの有無にかかわらず、それぞれの妊娠には異なる経過があります。必要以上に不安を抱えず、医師や助産師と相談しながら、自分のペースで妊娠期間を過ごしてください。
主な参考資料:こども家庭庁「妊娠・出産|妊娠中の検査に関する情報サイト」、厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」、日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン―産科編2023」、仙台赤十字病院「つわりについて1」(2025年4月7日)、Nature掲載論文「GDF15 linked to maternal risk of nausea and vomiting during pregnancy」(2024年1月)。