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パラコートとは何か?強い毒性・人体への影響と日本の規制を2026年最新情報で解説

藤崎 澪 藤崎 澪 • 更新: • 公開: • 読了約 20 分
目次

パラコートとは、雑草を枯らすために使用されるビピリジリウム系の非選択性除草剤の有効成分です。植物に接触すると活性酸素を発生させ、細胞を破壊する強い除草作用を示します。一方、人間が体内に取り込んだ場合にも肺や腎臓、肝臓などに深刻な障害を引き起こす可能性があり、農薬の中でも特に毒性に注意が必要な化学物質として知られています。

2026年10月現在、日本ではパラコートを含む農薬の登録情報が確認でき、全面禁止されているわけではありません。ただし、毒物及び劇物取締法では「毒物」に指定されており、農薬取締法に基づく登録や使用条件、安全管理も関係します。2027年3月には再評価に関する資料提出期限も設定されています。人体への健康被害から国内の規制状況まで、厚生労働省、農林水産省、環境省などの公的資料を基に解説します。

【基本知識】パラコートとは?除草剤としての特徴とCAS番号1910-42-5

パラコートとは

パラコート(Paraquat)は、英国のICI社(現シンジェンタ社)によって開発された除草剤です。日本では1965年に初めて農薬登録されました。

化学物質としては、1,1'-ジメチル-4,4'-ビピリジニウム=ジクロリドという名称で知られています。農薬として使用される代表的な形態はパラコートジクロリドです。

厚生労働省の化学物質関連資料では、次のように整理されています。

  • 一般名:パラコート
  • 英名:Paraquat
  • 化学名:1,1-ジメチル-4,4'-ビピリジニウム=ジクロリド
  • CAS番号:1910-42-5
  • 分子式:C12H14Cl2N2
  • 主な用途:農薬・除草剤
  • 化学分類:ビピリジリウム系
パラコート除草剤の作用機序

パラコートの特徴は、植物の光合成に関係する電子伝達系に作用することです。

植物体に吸収されたパラコートは、光合成系から電子を受け取り、酸素との反応を通じて活性酸素種を発生させます。この反応が繰り返されることで植物細胞の膜などが酸化的な損傷を受け、最終的に植物が枯死します。

このため、パラコートは非選択性の接触型除草剤に分類されます。特定の雑草だけを選んで枯らすものではなく、薬剤が接触した植物に広く作用する性質があります。

また、植物の地下部まで移行する性質が乏しいことも特徴です。地上部に対して速やかに作用する一方、多年生雑草の地下茎などには十分な効果が及ばない場合があります。

【健康リスク】パラコートの毒性と人体への影響は?

パラコートが特に問題視されてきた理由は、除草作用の強さだけではありません。人間の体内に入った場合にも、複数の臓器に深刻な障害を引き起こす可能性があるためです。

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」に掲載されている安全データシートでは、パラコートジクロリドについて、経口・経皮・吸入による急性毒性や、肺・肝臓・腎臓への臓器障害が示されています。

特に注意が必要なのは肺への障害

パラコート中毒で特徴的なのが、肺に対する強い毒性です。

体内に吸収されたパラコートは、肺を含む複数の組織に分布します。肺の細胞では酸化ストレスが生じ、肺胞などの組織が損傷する可能性があります。

重症例では肺水腫や肺胞の炎症が進み、さらに肺線維症へ移行することがあります。肺線維症は、肺の組織が硬くなり、酸素を取り込む機能が損なわれる病態です。

腎臓や肝臓にも影響が及び、急性腎障害、肝機能障害、循環器系の異常などを伴う場合があります。

パラコート中毒で見られる主な症状

中毒症状は、ばく露した経路や程度、時間経過によって異なります。

  • 口や喉:痛み、炎症、粘膜の損傷、嚥下障害
  • 消化器:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
  • 呼吸器:咳、息切れ、呼吸困難、肺水腫、肺線維症
  • 腎臓:腎機能の低下、急性腎不全
  • 肝臓:肝機能障害、重症例での肝不全
  • 全身:血圧低下、意識障害、循環不全など

注意したいのは、初期症状だけでは重症度を判断できないことです。初めは目立った異常がなくても、時間の経過とともに肺や腎臓などの障害が明らかになる場合があります。

また、皮膚からの吸収やミストの吸入による健康被害も考えられます。特に皮膚に傷や炎症がある場合、薬剤との接触には注意が必要です。

慢性的な健康被害との関係

パラコートの健康影響を考える際には、急性中毒と長期的なばく露を区別する必要があります。

厚生労働省のGHS分類では、パラコートジクロリドは反復ばく露による肺への障害についても分類されています。職業上の取り扱いでは、皮膚や眼への接触、ミストの吸入を防ぐための管理が必要です。

一方、パラコートへのばく露と特定の慢性疾患との関連を論じる場合には、研究対象やばく露量、期間、他の要因を区別して評価する必要があります。急性中毒で確認されている肺・腎臓への毒性と、長期的な疾患リスクを同一視することはできません。

【医療・救急】パラコート中毒の治療方法と緊急時の対応

パラコート中毒で最も重要なのは、疑いがある段階で速やかに医療機関につなぐことです。

米国疾病予防管理センター(CDC)が2026年6月に更新した化学物質情報でも、パラコートにばく露した場合には直ちに医療を受けるよう注意喚起されています。

特異的な解毒剤は確立されていない

パラコート中毒には、一般的な薬物中毒のように、原因物質を確実に無毒化する特異的な解毒剤が確立されていません。

そのため、治療では患者の状態やばく露状況に応じて、薬剤の吸収を抑えるための処置や、呼吸・循環・腎機能などを維持する支持療法が検討されます。

医療機関では、血液検査、尿検査、画像検査などを通じて臓器障害の状態を確認し、必要に応じて集中治療を行います。

活性炭などを用いた消化管内の除染や、腎機能障害に対する血液浄化療法が検討されることもあります。ただし、処置の有効性や適応は患者の状態によって異なり、治療を行えば必ず回復するというものではありません。

誤飲・皮膚への付着が疑われる場合

実際にパラコートへの接触や誤飲が疑われる場合、症状が現れるのを待ってはいけません。

  • 飲み込んだ可能性がある場合は、直ちに119番へ連絡する。
  • 自己判断で無理に吐かせない。
  • 皮膚に付着した場合は、汚染された衣類を取り除き、多量の水と石けんで洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で十分に洗浄し、医療機関に連絡する。
  • 薬剤の容器や製品名、ラベルなどがあれば、救急隊や医療従事者に伝える。

口から摂取した場合、見た目に異常がないことは安全の証明になりません。家庭での処置に頼らず、専門的な診察を受けることが必要です。

【法律・規制】毒物及び劇物取締法と農薬取締法での位置づけ

パラコートの国内規制を理解するには、毒物及び劇物取締法と農薬取締法の役割を分けて考える必要があります。

毒物及び劇物取締法では「毒物」に分類

厚生労働省の安全データシートによると、パラコートジクロリドは毒物及び劇物取締法において「毒物」に指定されています。

具体的には、毒物及び劇物取締法施行令第1条の指定にある「1,1'-ジメチル-4,4'-ジピリジニウムヒドロキシド、その塩類及びこれらのいずれかを含有する製剤」に該当します。

つまり、パラコートは法律上の区分として「劇物」ではなく「毒物」です。この区別は、化学物質の取り扱いや保管、販売などに関する法的管理を理解するうえで重要です。

農薬取締法では登録制度が関係する

毒物及び劇物取締法が主に毒性の強い物質の取り扱いを規制するのに対し、農薬取締法は農薬の登録や販売、使用などを管理する法律です。

農林水産省によれば、国内では農薬取締法に基づく登録が必要であり、登録された農薬には登録番号、有効成分、適用作物、使用方法などの表示が大切です。

登録のある製剤であっても、登録内容から外れた作物や用途、使用方法で自由に使用できるわけではありません。

パラコートをめぐる主な関係機関・制度の整理
関係する名称 役割・位置づけ 確認できる事実
パラコートジクロリド 化学物質・除草剤有効成分 CAS番号1910-42-5
毒物及び劇物取締法 毒性物質の管理 パラコートジクロリドは毒物に指定
農薬取締法 農薬の登録・販売・使用管理 登録番号や使用条件などを管理
農林水産省 農薬登録制度の所管 農薬登録情報提供システムを公開
厚生労働省 化学物質の健康影響・安全管理情報 GHS分類や安全データシートを公開
環境省 水質・生活環境への影響評価 農薬登録基準に関する審議を実施
食品安全委員会 食品を通じた健康影響評価 2022年6月28日に食品健康影響評価結果を通知

このように、パラコートは単に「毒性の強い農薬」という一つの分類だけで管理されているわけではありません。人の健康、農業での使用、食品中の残留、環境への影響という複数の観点から規制・評価されています。

【2026年最新】パラコートは日本で禁止された?農薬登録の現状と今後の規制

2026年10月時点で重要なのは、パラコートが国内で全面禁止されたという状況ではないことです。

農林水産省の農薬登録情報提供システムには、パラコートを有効成分に含む農薬が掲載されています。代表的な例が、ジクワットとパラコートを組み合わせた「プリグロックスL」です。

プリグロックスLの登録情報

農林水産省の登録情報によると、プリグロックスLの基本情報は次のとおりです。

  • 農薬名:プリグロックスL
  • 登録番号:16397
  • 農薬の種類:ジクワット・パラコート液剤
  • 用途:除草剤
  • 登録年月日:1986年6月25日
  • パラコートジクロリド:5.0%
  • ジクワットジブロミド:7.0%
  • 製剤毒性:毒

製剤には水や界面活性剤のほか、催吐性物質、色素、臭気性物質、苦味物質なども含まれています。

ここで注意したいのは、こうした添加物が入っているからといって、誤飲や接触による健康被害の危険がなくなるわけではないことです。

2026年の注目点は農薬の再評価

もう一つ重要なのが、農薬の再評価制度です。

農林水産省は登録農薬について、最新の科学的知見などに基づく再評価を進めています。2026年10月に確認できる再評価対象農薬の資料提出期限一覧では、パラコートジクロリド(パラコート)が2027年3月31日の提出期限に含まれています。

これは、登録を持つ関係者による再評価資料の提出期限を示すものです。2027年3月31日に自動的に登録が失効する、あるいは全面禁止になるという意味ではありません。

再評価によって安全性や環境影響に関する知見が整理されれば、今後の登録内容や管理方法に関係する可能性があります。

食品安全評価と環境影響も別々に確認する

食品安全委員会は2022年6月28日、パラコートの食品健康影響評価結果を通知しました。

その際に設定された許容一日摂取量(ADI)は、パラコートイオン換算で0.0045mg/kg体重/日です。また、急性参照用量(ARfD)も0.0045mg/kg体重とされています。

ADIは長期間にわたって毎日摂取する場合の評価指標であり、農薬原液の誤飲や事故時の安全量を示す数字ではありません。この点は混同しないようにする必要があります。

環境面では、パラコートジクロリドは水生環境に対する急性・長期毒性が強い物質としてGHS分類されています。

一方、パラコートは土壌中の粘土や有機物に強く吸着する性質もあります。この性質は土壌中での移動性や生物への利用可能性に影響しますが、土壌流出などを通じて水域に移動する可能性まで否定するものではありません。

2023年12月11日の環境省中央環境審議会農薬小委員会では、水質汚濁に係る登録基準について審議されました。パラコートジクロリドの基準値は0.016mg/Lとされ、水田使用時などの予測濃度について追加計算を行った結果、モニタリング対象とはしない整理が示されています。

これは特定の使用条件に基づく水質評価であり、パラコートが環境に無害であることを意味するものではありません。

【徹底比較】パラコートとジクワットの違いは?毒性と作用の特徴

パラコートを調べる際に混同されやすいのが、ジクワット(Diquat)です。

両者はビピリジリウム系の非選択性除草剤で、植物の光合成に関係する電子伝達系に作用するという共通点があります。しかし、化学構造や人体への毒性の現れ方には違いがあります。

パラコートとジクワットの比較
  • パラコート:パラコートジクロリドとして使用され、肺への強い毒性や肺線維症が特徴的な健康リスクです。
  • ジクワット:ジクワットジブロミドとして使用され、腎臓や中枢神経系などへの影響が問題となります。
  • 共通点:どちらも非選択性の除草剤であり、誤飲や不適切なばく露によって重篤な中毒を起こす可能性があります。

米国環境保護庁(EPA)の農薬中毒に関する専門資料でも、パラコートは肺への障害が特徴的である一方、ジクワットでは腎臓や中枢神経系への影響が異なる形で現れることが説明されています。

したがって、両者を同じ化学物質として扱ったり、どちらか一方なら安全だと判断したりすることは適切ではありません。

混合製剤が使われる背景

日本では、1986年にパラコートの毒性を軽減する目的でジクワットとの混合製剤が登場しました。代表例がプリグロックスLです。

ただし、混合製剤になったからといってパラコート自体の毒性がなくなったわけではありません。2026年現在の登録情報でも、パラコートを含む製剤の毒性区分は「毒」とされています。

製剤の濃度や成分の組み合わせだけを見て安全性を判断せず、個々の製品に付された登録情報と法的な取り扱いを確認することが大切です。

【プロの結論】パラコートをめぐる誤解と正しい情報の見極め方

パラコートについては、「日本では完全に禁止された」「ジクワットと混ぜれば安全」「毒物に指定されているから農薬登録も存在しない」といった誤解が生じやすい分野です。

しかし、これらは異なる制度や情報を混同した理解です。

知っておきたい3つの誤解

誤解1:パラコートは日本で全面禁止されている。

2026年10月現在、農林水産省の農薬登録情報にはパラコートを含む製剤が掲載されています。したがって、全面禁止と説明するのは正確ではありません。

誤解2:毒物に指定されているなら農薬登録はできない。

毒物及び劇物取締法と農薬取締法は、それぞれ異なる目的を持つ法律です。毒物として管理される化学物質を含む農薬であっても、農薬登録制度上の審査・管理と関係します。

誤解3:ADI以下ならパラコート製剤に触れても安全。

ADIは食品を通じた長期的な摂取を評価するための指標です。製剤の誤飲や皮膚への付着、吸入などの事故に適用できる安全基準ではありません。

公的情報を確認するときの判断基準
  • 化学物質の性質や毒性は、厚生労働省の職場のあんぜんサイトで確認する。
  • 国内で登録されている農薬は、農林水産省の農薬登録情報提供システムで確認する。
  • 販売・使用禁止の情報は、農林水産省の農薬関連情報で確認する。
  • 食品中の残留や健康影響は、食品安全委員会の評価書で確認する。
  • 水質や生態系への影響は、環境省の農薬登録基準関連資料で確認する。

特に農薬登録情報では、成分名だけでなく、製品名、登録番号、製剤毒性、適用作物、使用方法、登録状況をまとめて確認が必要です。

パラコートとは?に関するよくある質問(FAQ)

Q1:パラコートとはどのような農薬ですか?
A1:雑草を枯らすために使われるビピリジリウム系の非選択性接触型除草剤です。植物の光合成に関係する電子伝達系に作用し、活性酸素によって細胞を損傷させます。

Q2:パラコートは日本で禁止されていますか?
A2:2026年10月現在、全面禁止されているわけではありません。農林水産省の登録情報にはパラコートを含む製剤が掲載されています。ただし、毒物としての管理や農薬登録に基づく使用条件があります。

Q3:パラコートは毒物ですか、それとも劇物ですか?
A3:パラコートジクロリドは、毒物及び劇物取締法上の「毒物」に指定されています。法律上の分類は劇物ではありません。

Q4:パラコート中毒ではどのような症状が出ますか?
A4:口や喉の痛み、吐き気、嘔吐、腹痛などのほか、肺、腎臓、肝臓への障害が起こる可能性があります。重症例では肺水腫や肺線維症、呼吸不全などに進行する場合があります。

Q5:パラコート中毒には解毒剤がありますか?
A5:確立された特異的な解毒剤はありません。医療機関での早期の除染や支持療法、臓器機能の管理などが中心となります。誤飲やばく露が疑われる場合は、症状の有無にかかわらず直ちに救急医療につなぐ必要があります。

Q6:パラコートとジクワットは同じものですか?
A6:同じものではありません。どちらもビピリジリウム系除草剤ですが、化学物質としては別物です。パラコートでは肺への障害が特徴的であり、ジクワットでは腎臓や中枢神経系などへの影響が問題になります。

Q7:2027年にパラコートは禁止されるのですか?
A7:2026年時点で確認できる農林水産省の資料では、パラコートジクロリドの再評価に係る資料提出期限が2027年3月31日とされています。これは再評価資料の提出期限であり、その日に自動的に禁止されることを意味するものではありません。

パラコートは、雑草を枯らすために開発された強力な除草剤の有効成分です。植物に対する除草効果が高い一方、人体に取り込まれた場合には肺や腎臓、肝臓などに重大な障害を引き起こす可能性があります。

日本では、パラコートジクロリドが毒物及び劇物取締法上の「毒物」に指定されています。また、農薬取締法に基づく登録制度によって、製剤の登録や使用条件が管理されています。

2026年10月現在、農林水産省の登録情報にはパラコートを含む製剤が掲載されており、国内で全面禁止されたという状況ではありません。一方、2027年3月31日には再評価に関する資料提出期限が設定されており、今後の安全性評価にも注目する必要があります。

パラコートを理解するうえで重要なのは、毒物としての法的分類、農薬としての登録状況、食品を通じた健康影響、環境への影響をそれぞれ区別することです。

強い毒性を持つ化学物質だからこそ、名称だけで判断するのではなく、厚生労働省、農林水産省、環境省、食品安全委員会が公開する最新の公的資料を基に、その危険性と規制上の位置づけを正しく把握することが大切です。

主な参照資料: 厚生労働省、農林水産省、環境省、食品安全委員会、日本中毒学会、米国CDC・EPAの公開資料。

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藤崎 澪
デジタルマーケター 藤崎 澪
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旅行と暮らしの実用記事を担当。施設や交通機関の公式案内、自治体の公表資料を確認してから手順を書いています。

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