「子どもがいない夫婦は、老後に悲惨な生活を送ることになるのだろうか」。そんな不安を抱く人にとって、2026年に公表された統計は見逃せない内容となっている。日本総合研究所の2026年10月2日付の推計によると、2025年時点で65歳以上の子どものいない人は483万人。高齢者人口に占める割合は13.4%に達した。2020年の410万人、11.4%から増加している。
一方、子どものいない夫婦が必ず経済的に困窮したり、孤独な老後を送ったりするわけではない。問題になるのは、年金だけで暮らせる資金があるか、夫婦のどちらかが倒れたときに介護や手続きを誰に頼めるか、亡くなった後の生活をどう維持するかという具体的な準備だ。2025年国勢調査、総務省の2025年家計調査、内閣府の令和8年版高齢社会白書をもとに、老後の現実と今からできる対策を整理する。
【結論】子なし夫婦の老後は本当に悲惨なのか?不安の正体は3つの問題にある

最初に答えを示すと、子どもがいないことだけで老後が悲惨になるわけではない。しかし、子どもがいる家庭と比べた場合、親族による支援を期待できない場面があり、夫婦自身で準備しておく必要がある。
特に注意したいのは、次の3つの問題だ。
1.年金と貯蓄だけで生活できるかという経済問題子どもがいない夫婦は、教育費や子どもの独立後の援助などを考えずに済む一方、その分の資金を必ず老後に残せるとは限らない。住宅ローン、親の介護、自分たちの医療費、転職や病気による収入減少など、家庭ごとに事情は異なる。
また、老後に必要な生活費は、持ち家か賃貸か、都市部か地方か、健康状態はどうかによって変わる。単純に「子どもがいないから老後資金に余裕がある」と考えるのは危険だ。
2.介護や入院の際に頼れる人がいるかという問題夫婦が健康なうちは、互いに通院や買い物、行政手続きなどを助け合える。しかし、片方が認知症や要介護状態になれば、もう片方に介護負担が集中する。
加えて、夫婦が同時に体調を崩した場合や、先に配偶者を亡くした場合には、日常生活の支援だけでなく、入院時の連絡、施設への入所手続き、退院後の住まいの確保なども課題になる。
3.夫婦のどちらかが亡くなった後の生活問題子なし夫婦にとって、特に見落としやすいのが配偶者を亡くした後の生活だ。二人分の年金や収入を前提に組み立てた家計は、一人になれば大きく変わる。
葬儀、遺品整理、住居の管理、銀行口座や公共料金の手続きなども発生する。配偶者が担っていた役割を誰が引き継ぐのか、生前に決めておく必要がある。
重要なのは、子どもの有無ではなく、経済的な備え、頼れる人間関係、必要な契約や制度が整っているかどうかだ。子どもがいても遠方に住んでいたり、支援が難しい事情を抱えていたりする家庭はある。血縁関係だけを老後の安全網と考えないことが大切だ。
【2025年国勢調査と日本総研の推計】子どものいない高齢者483万人・13.4%の実態
2026年に公表された重要なデータが、日本総合研究所のリサーチ・アイ「未婚率の上昇により身寄りのない高齢者は今後さらに増加の見通し」だ。岡元真希子氏が2026年10月2日に公表した分析では、2025年国勢調査の人口等基本集計結果をもとに、高齢者の子どもの有無を推計している。
2020年から2025年にかけて73万人増加日本総研の推計によると、65歳以上で子どものいない人は2020年の410万人から、2025年には483万人に増加した。5年間で73万人増えた計算だ。
高齢者人口に占める割合も11.4%から13.4%へ上昇している。特に、団塊世代を含む75~84歳で増加幅が大きかったと分析されている。
この数字が示しているのは、子どものいない高齢者が一部の特殊な家庭だけの問題ではなく、社会全体で考えるべき課題になっているということだ。
483万人は子なし夫婦だけを数えた数字ではないここで注意したいのが、483万人という数字の意味だ。
これは65歳以上の子どものいない人についての推計であり、子どものいない夫婦の世帯数ではない。未婚者、配偶者と死別した人、離婚した人、現在も配偶者がいる人など、さまざまな立場の人が含まれる。
また、2025年国勢調査の人口等基本集計は2026年9月29日に公表されたが、夫婦や子どものいる世帯などを扱う就業状態等基本集計は2027年3月までの公表予定となっている。483万人は国勢調査が子どものいない人を直接数えた確定値ではなく、人口等基本集計を利用した日本総研の推計値である。
亡くなった後に頼れる親族がいない人も増えている日本総研の分析では、2025年に亡くなった65歳以上の人は146万人と推計され、そのうち子どもがいなかったとみられる人は18万9,000人だった。
加えて、子どもだけでなく配偶者や甥・姪もいなかった人は4万6,000人と推計されている。
ここから分かるのは、子どもの有無と身寄りの有無は同じではないということだ。子どもがいなくても、配偶者や兄弟姉妹、甥・姪、友人などとのつながりがある人はいる。反対に、子どもがいても支援を頼める関係にあるとは限らない。
老後のリスクを考える際には、単に子どもがいるかどうかではなく、実際に困ったときに連絡できる人や手続きを頼める人がいるかを確認する必要がある。
【総務省の2025年家計調査】高齢夫婦無職世帯の年金収入と生活費はいくら?
子なし夫婦の老後資金計画を考えるうえで、基準になるのが総務省統計局の「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果」だ。
2025年の65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、実収入が月平均25万4,395円、可処分所得が22万1,544円だった。一方、消費支出は26万3,979円となっている。
高齢夫婦無職世帯は月約4.2万円の不足家計調査の数字を整理すると、次のようになる。
| 項目 | 月平均額 | 内容 |
|---|---|---|
| 実収入 | 254,395円 | 年金などを含む収入総額 |
| 社会保障給付 | 228,614円 | 実収入の約89.9% |
| 非消費支出 | 32,850円 | 税金・社会保険料など |
| 可処分所得 | 221,544円 | 税金・社会保険料などを差し引いた収入 |
| 消費支出 | 263,979円 | 食費・住居費・光熱費など |
| 毎月の不足額 | 約42,434円 | 可処分所得に対する消費支出の超過 |
毎月約4万2,434円の不足は、年間に換算すると約50万9,000円になる。仮に同じ不足額が20年間続けば、単純計算で約1,018万円が必要になる。
ただし、これは2025年の平均値を固定した試算であり、将来の物価上昇、年金額の変化、医療費や介護費用、運用収益などは反映していない。すべての家庭に1,018万円が必要という意味ではない。
この調査は子どものいない夫婦だけのデータではないここは非常に要点だ。
総務省の高齢夫婦無職世帯は、65歳以上の夫婦のみで暮らす無職世帯を対象とした統計上の区分である。成人した子どもが別居している夫婦も含まれるため、子どものいない夫婦だけの家計を示した数字ではない。
それでも、年金などの収入だけで高齢期の生活費をすべて賄えるとは限らないことを示す参考資料になる。
賃貸住宅の夫婦は住居費にも注意老後の生活費を考えるとき、見落としやすいのが住居費だ。
持ち家で住宅ローンを完済している家庭と、賃貸住宅に住み続ける家庭では、毎月の支出が大きく異なる。家計調査の平均値をそのまま賃貸世帯に当てはめることはできない。
また、持ち家であっても固定資産税、修繕費、設備交換費用などは発生する。マンションなら管理費や修繕積立金も必要だ。
子なし夫婦の資金計画では、毎月の食費や光熱費だけでなく、住宅の維持費、医療費、介護費用、葬儀や死後の手続きに必要な資金まで分けて考えたい。
老後資金は夫婦それぞれの年金額から計算する高齢夫婦無職世帯の平均収入が約25万円だからといって、自分たちも同じ金額を受け取れるとは限らない。
国民年金と厚生年金では受給額が異なり、加入期間、現役時代の給与、保険料納付状況などによっても変わる。夫婦のどちらかが自営業中心だった場合と、長期間会社員として働いていた場合では、老後の収入構造も違う。
まずは夫婦それぞれの年金見込額を確認し、実際の家計支出と比較することが出発点になる。
【介護・身元保証人・入院問題】子なし夫婦が直面しやすい老後の現実
子なし夫婦の老後で、経済問題と同じくらい重要なのが介護と身元保証の問題だ。
健康なうちは夫婦で協力できても、どちらかが要介護状態になれば、もう片方が介護者になる。さらに介護する側も高齢であれば、通院の付き添いや食事の準備、行政手続きなどを継続することが難しくなる。
入院時に身元保証人がいないとどうなる?病院への入院や介護施設への入所では、緊急連絡先、費用の支払い、退院後の対応、亡くなった後の手続きなどについて、家族や保証人への協力を求められることがある。
子どものいない夫婦の場合、配偶者が保証や連絡を担っている間は問題が表面化しにくい。しかし、配偶者自身が病気になったり、先に亡くなったりすると、頼れる人がいなくなる可能性がある。
ただし、身元保証人がいないことだけを理由に、病院が入院を拒否することは認められていない。厚生労働省は2018年4月、身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関が入院を拒否することについて、適切な対応を求める通知を出している。
2019年には、身寄りがない人の入院や医療に関する意思決定を支援するガイドラインも公表された。
したがって、身元保証人がいないから医療を受けられないと決めつける必要はない。一方、緊急連絡先や退院後の生活支援など、実務上の課題は別に残る。
成年後見人が身元保証人になってくれるわけではないここで誤解されやすいのが成年後見制度だ。
成年後見人は、本人の財産管理や契約などの法律行為を支援する役割を担う。しかし、成年後見人になれば何でも対応してもらえるわけではない。
厚生労働省の成年後見制度に関する資料では、後見人等の職務に含まれない行為として、次の内容が整理されている。
- 食事や排泄の介助、掃除、送迎などの事実上の介護
- 身元保証人や入院保証人になること
- 手術などの医療行為への同意
- 本人の死亡後の一般的な事務手続き
つまり、成年後見制度を利用すれば身元保証、介護、死後の手続きまで一括して解決できるという考え方は正しくない。それぞれに適した支援や契約を準備する必要がある。
2026年の高齢社会白書も身寄りのない高齢者を課題として取り上げている内閣府の「令和8年版高齢社会白書」では、身寄りのない高齢者への支援が健康・福祉分野の施策として取り上げられている。
具体的には、望まない孤独や社会的孤立を防ぐため、地域の多様な団体が連携する仕組みづくりや、日常生活での緩やかなつながり、居場所づくりを推進する方針が示された。
また、頼れる身寄りがいない高齢者に対して、定期的な安否確認、入院・入所手続きの支援、死後事務の支援などを試行的に進める取り組みも紹介されている。
これは、家族だけに高齢者の生活支援を任せるのではなく、行政、社会福祉協議会、地域団体、民間事業者などが役割を分担する方向に進んでいることを示している。
【どちらかが亡くなった後】子なし夫婦の老後に起きる年金・相続・孤独の問題
子なし夫婦にとって、夫婦二人で暮らしている期間と、どちらか一人になった後では、生活の条件が大きく変わる。
特に注意したいのは、収入、相続、生活支援、人間関係の4つだ。
配偶者を亡くすと年金収入が変わる夫婦のどちらかが亡くなると、亡くなった人の年金がそのまま残るわけではない。残された配偶者の老齢年金と、受給要件を満たした場合の遺族年金などを組み合わせて生活することになる。
日本年金機構によると、遺族厚生年金は、一定の要件を満たす場合には子どものいない配偶者も受給対象になる。一方、遺族基礎年金は原則として、一定の要件を満たす子のある配偶者または子が対象だ。
そのため、子どものいない夫婦は、配偶者が亡くなった場合にどの遺族年金を受け取れるのか、事前に確認しておく必要がある。
受給資格や金額は、亡くなった人の年金加入歴、保険料納付状況、残された配偶者の年齢などによって変わる。平均額だけで判断せず、年金事務所などで個別に確認したい。
子どもがいない場合、配偶者以外も相続人になることがある意外と知られていないのが、子どものいない夫婦の相続だ。
日本の民法では、配偶者は常に法定相続人になるが、配偶者以外の相続人は順位によって決まる。
- 子どもがいない場合:亡くなった人の父母などの直系尊属が相続人になることがある。
- 子どもも直系尊属もいない場合:亡くなった人の兄弟姉妹が相続人になることがある。
- 兄弟姉妹が先に亡くなっている場合:その子である甥・姪が代襲相続人になることがある。
例えば、子どもがおらず、亡くなった人の親が健在であれば、原則として配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1を相続する。親もおらず兄弟姉妹が相続人となる場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹側が4分の1となる。
夫婦が長年一緒に築いた自宅や預貯金について、残された配偶者がすべて相続できるとは限らない。
遺言書を作成しておくことで、財産の引き継ぎ方を明確にできる。特に自宅の名義、預貯金、保険、不動産などについては、早めに整理しておきたい。
孤独と社会的孤立は子どもの有無だけで決まらない配偶者を亡くした後に深刻になりやすいのが、日常的な会話や外出の機会が減ることだ。
夫婦二人で暮らしていると、食事や買い物、テレビを見る時間など、日々の生活の中に自然な交流がある。しかし一人になると、誰とも話さない日が続くこともある。
子どもがいないこと自体が孤独の原因なのではない。配偶者以外との交流が少なく、困ったときに相談できる相手がいない状態が問題なのだ。
地域の趣味活動、友人との交流、自治体の高齢者向け事業、ボランティア、社会参加の場などを通じて、夫婦以外のつながりを持っておくことが大切になる。
特に夫婦のどちらかが亡くなった後も続けられる人間関係を、元気なうちから築いておきたい。
【今からできる終活と資金計画】任意後見・成年後見・死後事務委任契約の違い
子なし夫婦が老後の不安を減らすためには、夫婦二人だけで問題を抱え込まない仕組みを作ることが重要だ。
そのために検討したいのが、資金計画、任意後見制度、成年後見制度、死後事務委任契約の4つである。
1.夫婦それぞれの老後資金を把握する最初に行いたいのは、夫婦それぞれの年金見込額と預貯金、保険、不動産、借入金を整理することだ。
生活費については、次のように分けると計画を立てやすい。
- 毎月の生活費:食費、光熱費、通信費、住居費、交通費など。
- 医療・介護費用:通院、薬代、介護サービス、施設入居など。
- 住宅関連費用:修繕、設備交換、固定資産税、賃貸更新など。
- 緊急予備費:入院、介護環境の変更、収入減少などへの備え。
- 終活費用:葬儀、納骨、遺品整理、行政手続きなど。
重要なのは、夫婦二人分の生活費だけでなく、一人になった場合の収支も試算することだ。食費や光熱費は減っても、住居費や管理費などは二人暮らしのときと同じように発生する場合がある。
2.任意後見制度は判断能力があるうちに準備する任意後見制度とは、将来、認知症などによって判断能力が不十分になった場合に備え、本人が十分な判断能力を持っている段階で、将来の後見人と支援内容を契約で決めておく制度だ。
法務省の制度説明によると、任意後見契約は公正証書で作成する。実際に効力が発生するのは、本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任してからとなる。
任意後見制度のメリットは、将来の支援者を自分で選び、財産管理や契約など、任せたい事務の範囲を事前に決められることだ。
ただし、任意後見人は身元保証人や介護者になるわけではない。死後の事務も別途準備する必要がある。
3.成年後見制度は判断能力が低下した後に利用する成年後見制度のうち、法定後見制度は、認知症などによって本人が一人で重要な契約や財産管理を行うことが難しくなった場合に、家庭裁判所が成年後見人等を選任する仕組みだ。
法定後見には、本人の判断能力の程度に応じて「補助」「保佐」「後見」の3つの類型がある。
任意後見との違いを整理すると、次のようになる。
- 任意後見制度:判断能力が十分にあるうちに、本人が将来の後見人と支援内容を契約で決める。
- 成年後見制度(法定後見):判断能力が低下した後、家庭裁判所が成年後見人等を選任する。
任意後見制度は自分の希望を反映しやすい一方、法定後見制度では、本人や家族が希望した人が必ず選任されるとは限らない。
なお、成年後見制度は本人の権利や財産を守るための制度であり、介護や身元保証をすべて引き受けてもらうためのサービスではない。
4.死後事務委任契約で亡くなった後の手続きを決める死後事務委任契約は、自分が亡くなった後に必要となる事務を、あらかじめ第三者に委任しておく契約だ。
具体的には、次のような手続きを依頼することが考えられる。
- 葬儀や火葬、納骨に関する手続き
- 役所への届出や必要書類の提出
- 公共料金や携帯電話などの解約
- 賃貸住宅の解約や明け渡し
- 遺品整理や家財道具の処分
- 関係者への連絡
遺言書が主に財産の承継方法を定めるものであるのに対し、死後事務委任契約は、亡くなった後に発生する実務を第三者に依頼するための仕組みだ。
両者は役割が異なるため、必要に応じて併用することが望ましい。
死後事務委任契約の費用はどれくらい?死後事務委任契約には、全国一律の公定料金があるわけではない。依頼先、契約内容、葬儀の規模、納骨方法、家財処分の範囲などによって費用は変わる。
2026年8月に公開された司法書士事務所の解説では、契約書作成報酬5万~15万円、葬儀などの実費30万~130万円程度、総額50万~150万円程度という料金例が紹介されている。これは一事務所が示す参考的な価格帯であり、全国平均や一律の相場ではない。
費用を検討するときは、次の3つを分けて確認したい。
- 契約時の費用:契約書の作成、公正証書化などにかかる費用。
- 執行報酬:亡くなった後に受任者が実際に手続きを行うための報酬。
- 実費・預託金:葬儀、納骨、遺品整理、住居の明け渡しなどに必要な費用。
特に注意したいのが預託金の管理だ。亡くなった後は金融機関に死亡の事実が伝わることで、本人名義の口座から自由に資金を引き出せなくなる場合がある。必要な費用をどう確保するのか、預託金の管理方法や返金条件まで確認する必要がある。
任意後見契約の公正証書作成費用も確認しておく日本公証人連合会が公表している任意後見契約の費用は、2026年時点で公正証書作成手数料1万3,000円が基本となる。
これに収入印紙代2,600円、登記嘱託手数料1,600円、郵便料金、正本・謄本などの作成費用が加わる。財産管理等委任契約を併せて締結する場合は、その契約に関する追加手数料も必要だ。
加えて、任意後見が実際に開始された後には、任意後見人への報酬や任意後見監督人への報酬が発生する場合もある。
契約を作成する段階の費用だけでなく、将来の継続的な費用まで考えておきたい。
子なし夫婦が60代までに進めたい終活チェックリスト制度や契約の準備は、判断能力や健康状態に問題がないうちに始めるほど選択肢が広がる。
- 夫婦それぞれの年金見込額を確認する。
- 老後の毎月の生活費と年間の特別支出を把握する。
- 預貯金、不動産、保険、借入金の一覧を作る。
- 配偶者が亡くなった場合の生活費を試算する。
- 緊急連絡先や入院時の連絡先を決める。
- 地域包括支援センターや社会福祉協議会の相談窓口を確認する。
- 任意後見契約や財産管理等委任契約の必要性を検討する。
- 遺言書を作成し、財産の引き継ぎ方を明確にする。
- 死後事務委任契約の依頼先と費用を比較する。
- 夫婦以外にも相談できる友人や地域のつながりを持つ。
すべてを一度に契約する必要はない。まずは家計と年金の確認から始め、夫婦の健康状態や資産状況に応じて、必要な制度を選ぶことが現実的だ。
【子なし夫婦の老後】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:子どものいない夫婦は老後に必ず悲惨な生活になりますか?
A1:必ず悲惨になるわけではない。老後の生活は、年金額、貯蓄、住宅事情、健康状態、地域とのつながり、介護や死後事務の準備などによって変わる。子どもがいなくても、資金計画と支援体制が整っていれば安定した生活を送ることは可能だ。
Q2:子どものいない高齢者483万人という数字は、子なし夫婦の人数ですか?
A2:違う。日本総研が2025年国勢調査の人口等基本集計結果をもとに推計した、65歳以上で子どものいない人の人数だ。未婚者、死別者、離婚経験者、配偶者のいる人などを含むため、子なし夫婦だけの人数ではない。
Q3:子なし夫婦は老後に身元保証人がいないと入院できませんか?
A3:身元保証人がいないことだけを理由に、医療機関が入院を拒否することは認められていない。ただし、緊急連絡先、退院後の生活支援、費用の支払いなどは別の問題になる。自治体や地域包括支援センターに相談し、必要に応じて専門家や高齢者等終身サポート事業者の利用を検討したい。
Q4:死後事務委任契約と成年後見制度は同じものですか?
A4:異なる制度だ。成年後見制度は本人の判断能力が低下した場合の財産管理や法律行為などを支援する仕組みで、死後事務委任契約は亡くなった後の葬儀、納骨、住居の解約、遺品整理などを第三者に依頼する契約だ。必要に応じて別々に準備する必要がある。
Q5:子なし夫婦が老後資金として準備すべき金額はいくらですか?
A5:一律の正解はない。2025年の総務省家計調査では、高齢夫婦無職世帯の月平均不足額は約4.2万円だが、これは子どものいない夫婦だけの数字ではない。夫婦それぞれの年金見込額、住宅費、医療費、介護費用、生活水準をもとに個別に計算することが必要だ。
子なし夫婦の老後が悲惨になるという見方は、必ずしも正しくない。しかし、子どものいない高齢者が増加し、介護や身元保証、死後事務を誰が担うのかという問題が社会的な課題になっていることは、2026年の公的資料や研究機関の推計からも明らかだ。
日本総研の2025年推計では、65歳以上で子どものいない人は483万人、高齢者人口の13.4%に達した。また、総務省の2025年家計調査では、高齢夫婦無職世帯の可処分所得と消費支出の間に月約4.2万円の差が生じている。
ただし、これらの数字は子なし夫婦だけの経済状況や生活実態を直接示したものではない。数字を正しく読み、自分たちの家庭に当てはめて考えることが必要だ。
特に重要なのは、次の3つの準備である。
- お金の準備:夫婦それぞれの年金額を把握し、二人暮らしと一人暮らしの両方の生活費を計算する。
- 人の準備:配偶者以外にも、入院や介護、緊急時に相談できる人や支援機関を確保する。
- 制度の準備:任意後見、遺言、死後事務委任契約などを必要に応じて組み合わせる。
子どもがいるかどうかは変えられないが、老後の生活設計は今から変えられる。夫婦のどちらかが元気なうちに、もし一人になったらどう暮らすのか、介護が必要になったら誰に頼るのか、亡くなった後の手続きをどうするのかを話し合っておきたい。
老後の安心を決めるのは、子どもの人数だけではない。経済的な自立、信頼できる人間関係、必要な制度を組み合わせ、自分たちの意思で生活を選べる状態を作っておくこと。それこそが、子なし夫婦にとって現実的で後悔の少ない老後への備えとなる。