「事業家集団はマルチ商法なのか」という疑問は、問題を理解するうえで避けて通れない。
関西テレビは2022年5月の報道で、同集団を「脱法マルチ」と表現した。TBSの調査報道でも、商品購入と勧誘を組み合わせた仕組みについて、特定商取引法上の連鎖販売取引に該当する可能性が指摘された。
一方、2025年12月の公式見解では、事業家集団側は連鎖販売取引に該当しないと反論している。両者の主張を理解するには、まず法律上の定義を確認する必要がある。
連鎖販売取引に該当する4つの要件消費者庁の特定商取引法ガイドによると、連鎖販売取引は、次の4つの要件を満たす取引を指す。
重要なのは、単に商品を販売している、会員を募集している、紹介ポイントがあるという一つの事情だけで、直ちに連鎖販売取引と決まるわけではないことだ。4要件を実際の契約や取引の仕組みに照らして判断する必要がある。
また、特定商取引法では、連鎖販売取引に該当する場合、勧誘に先立って事業者名、契約勧誘の目的、商品やサービスの種類などを明らかにする義務がある。虚偽説明や重要事項の不告知、威迫による勧誘なども規制されている。
事業家集団側が「マルチ商法ではない」と説明する理由2025年12月1日の公式見解では、事業家集団の法務部は、特定商取引法上の4要件のうち、特定利益による誘引が存在しないと主張している。
「特定利益の供与による誘引」を欠いております。
つまり、公式側の説明では、メンバーが活動を通じて事業や商品販売に関わることがあったとしても、新たな販売員を勧誘して特定利益を得られると誘引する仕組みではないため、法律上の連鎖販売取引には該当しないという立場だ。
公式側は加えて、商品購入やメンバー間の取引は正当な経済活動であり、それを違法な買い込みや搾取と断定することは不適切だと反論している。
報道側と公式側の主張が食い違うポイント争点は、実際の活動がどのような経済的な仕組みで動いていたかにある。
- 元メンバーの証言では、商品購入を続けることや新たなメンバーを集めることが、将来自分が師匠になるための活動として説明されていた。
- 関西テレビの報道では、紹介した相手の商品購入額に応じたポイント還元の仕組みが紹介された。
- 公式側は、連鎖販売取引の成立要件である特定利益による誘引がないと説明している。
ここで検証すべきなのは、ポイントの存在だけではない。ポイントがどのような条件で付与され、誰に利益が帰属し、メンバーの勧誘と商品購入がどのように結び付いていたのかという点だ。
たとえば、紹介した相手が購入した商品の金額に応じて経済的利益を得る仕組みと、単なる店舗の割引サービスでは、法律上の評価が異なる可能性がある。
なお、「脱法マルチ」は特定商取引法に定められた独立の取引類型ではなく、報道や専門家が問題の仕組みを説明する際に使った表現だ。関西テレビが紹介した弁護士の見解と、行政機関による法的認定も同一ではない。
したがって、2026年現在、事業家集団全体について「違法なマルチ商法と確定している」と断定することも、「公式が否定しているから問題は存在しない」と判断することも適切ではない。実際の契約書、販売経路、報酬の計算方法、勧誘時の説明を個別に確認する必要がある。
【事業家集団の現在と公式見解】2026年も活動は続いているのか

2022年の報道から数年が経過した2026年、事業家集団の現在を知る手掛かりになるのが、公式サイトと公式メディアの発信だ。
2025年12月に公表された公式見解公式側は2025年12月1日、「当団体に対する一部報道・SNS投稿等への公式見解と今後の対応方針」を公開した。
声明では、2021年以降の報道やSNS投稿などについて、一部に虚偽や誇張された内容があると主張。特に、次のような情報を問題視している。
- マルチ商法やカルト組織だと断定する投稿
- 商品の強制購入や不当な搾取があるとする投稿
- 共同生活の強制や生活の監視があるとする投稿
- 外部との接触制限や退会の困難さを主張する投稿
- 暴力や拘束があったとする投稿
公式側は、これらの一部について発信者情報開示請求や損害賠償請求などの法的措置を進めてきたと説明している。
2025年12月20日には、虚偽情報を発信したとする匿名発信者の一人が刑事起訴されたことも公表した。公式発表によると、刑事裁判は継続中であり、民事・刑事の両面から対応する方針を示している。
ただし、刑事起訴は有罪判決ではない。また、名誉毀損に関する個別の裁判や和解があったとしても、それによって組織全体の商取引や過去の勧誘方法の適法性が包括的に認定されたことにはならない。
2026年の公式活動と事業内容2026年11月2日時点で、公式サイトには2026年3月31日のセミナー開催に関する報告や、10月のミッション・ビジョン、目標設定に関する情報が掲載されている。
公式サイトが現在紹介している活動は、次のようなものだ。
- メディアやSNSを通じた情報発信
- 経営者向けセミナーや講演会
- ビジネス交流会や共同プロジェクト
- 飲食、美容・健康、小売関連事業
- 不動産、人材、経営コンサルティングなどの事業
公式の活動実績ページには、飲食店舗の展開、イベント出店、スポーツチームとの連携、出版、講演なども掲載されている。ただし、これらは公式側が紹介する実績であり、個々の事業の売上高や参加者の収益、メンバー全体の経済状況を示す独立した統計とは異なる。
また、2026年の公式発信が確認できることと、2022年に元メンバーが証言した問題がすべて解消されたことは別の話だ。現在の活動方針、契約条件、販売構造、参加者への費用負担を確認することが、実態を把握するうえで欠かせない。
事業家集団の評判はどう評価すべきか事業家集団の評判は、大きく分けると、報道で紹介された元メンバーの否定的な体験談と、公式側が掲げる事業活動・自己成長・コミュニティ形成という二つの方向から語られている。
否定的な評価の中心には、金銭的な負担、勧誘活動への時間投入、師匠との上下関係、仕事や住居の変更、共同生活などがある。一方、公式側は、仲間との学びや事業家同士の協業を通じた成長を活動の価値として説明している。
ただし、インターネット上の口コミや匿名投稿の件数だけで、団体の評判や実態を判断するのは危険だ。実際に参加した人の経験であっても、所属期間、チーム、購入内容、契約相手によって事情は異なる。
判断する際には、体験談の具体性、契約書などの裏付け、公式側の説明、第三者機関による判断を組み合わせることが大切だ。
【事業家集団の見分け方】怪しい勧誘を避ける7つの判断ポイント
事業家集団に限らず、起業コミュニティや自己投資セミナーへの参加を検討するときには、活動の目的と契約内容を先に把握する必要がある。
特に、友人作りや交流会を入口にして、後から有料活動や商品購入の話が出てくる場合は、説明の一貫性を確かめたい。
参加前に確認したい7項目
参加前の確認リスト
1. 勧誘の目的を最初に説明しているか
友人作り、交流会、勉強会などの説明だけでなく、商品販売や有料サービスへの案内があるかを確認する。
2. 運営主体と責任者が明確か
団体名、運営会社、所在地、責任者、問い合わせ先を確認する。
3. 費用の総額が明らかか
入会金、月会費、商品購入費、セミナー代、イベント代、交通費などを確認する。
4. 商品購入が参加条件になっていないか
購入の頻度、金額、購入先、返品条件、購入を断った場合の扱いを確認する。
5. 勧誘による報酬やポイントがあるか
紹介人数や購入額によって報酬、ポイント、昇格などが発生する仕組みを確認する。
6. 仕事や住居の変更を勧められないか
転職、退職、引っ越し、共同生活など、生活基盤に関わる決断を急がされていないかを確認する。
7. 退会や契約解除の条件が明確か
解約方法、違約金、返品条件、未使用商品の扱いなどを書面で確認する。
以下のような言動があった場合は、契約を急がず、第三者に相談した方がよい。
- 「今の仕事を続けていても成功できない」と不安を強く刺激する。
- 「師匠の言うことを信じれば成功できる」と判断を一人の人物に委ねさせる。
- 「自己投資だから借金しても問題ない」と説明する。
- 「仲間を増やすことが最優先」として、商品購入や勧誘を繰り返し求める。
- 家族や友人への相談を嫌がる。
- その場での契約や高額商品の購入を急がせる。
- 退会や購入拒否に対して、損害賠償や人間関係を持ち出して圧力をかける。
これらは事業家集団だけに当てはまる特徴ではなく、一般的な悪質商法を見分ける際にも参考になるポイントだ。
向いている人・慎重に検討すべき人経営者同士の交流や起業の勉強会は、目的、内容、費用が明確であれば、事業を学ぶ選択肢の一つになる。
ただし、次のような場合は参加を慎重に考えたい。
慎重に検討すべき人
- 生活費や貯蓄に余裕がなく、借入れをしないと費用を払えない人。
- 商品を購入すること自体に関心がない人。
- 勧誘や営業活動をしたくない人。
- 仕事や住居など、現在の生活基盤を守りたい人。
- 契約内容を確認する時間が与えられない人。
参加を検討できる条件
- 運営者と契約相手が明確である。
- 学習内容と講師の実績を具体的に確認できる。
- 費用の総額と解約条件が書面で提示されている。
- 商品購入や新規勧誘が参加の必須条件ではないか確認できる。
- 家族や友人に相談しても問題がない。
起業を学ぶ方法は一つではない。商工会議所、自治体の創業支援窓口、公的な起業セミナー、大学の公開講座など、比較的透明性の高い選択肢もある。特定のコミュニティに入らなければ起業できないわけではない。
すでに契約・購入してしまった場合の対処法契約や商品の購入をしてしまった場合でも、すぐに諦める必要はない。
消費者庁の特定商取引法ガイドによると、連鎖販売取引に該当する場合、法定書面を受け取った日などを基準に、原則として20日間のクーリングオフ期間が設けられている。
また、一定の条件を満たせば、クーリングオフ期間経過後の中途解約や商品の返品が認められる場合もある。勧誘時の不実告知や重要事項の不告知によって契約した場合には、意思表示の取消しが問題になることもある。
ただし、すべてのセミナー代や商品購入が自動的にクーリングオフの対象になるわけではない。契約の種類や契約相手、購入目的によって適用される法律が異なる。
困った場合は、消費者ホットライン188(いやや)に相談すると、最寄りの消費生活センターなどを案内してもらえる。契約書、領収書、振込記録、SNSのメッセージ、勧誘時の説明などは削除せず保存しておきたい。
【事業家集団に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:事業家集団とは、結局どのような団体ですか?
A1:起業や自己成長、事業家同士の交流を掲げるコミュニティとして公式側は説明しています。一方、2022年には「環境」などと呼ばれる集団について、勧誘や商品購入、師匠と弟子の関係をめぐる調査報道が行われました。
Q2:事業家集団は怪しい、危険な団体なのでしょうか?
A2:団体全体を一律に違法・危険と断定することはできません。ただし、過去の報道では元メンバーから多額の支出や借金、勧誘活動、共同生活などについて深刻な証言が出ています。参加を検討する場合は、運営主体、費用、契約、勧誘の仕組みを確認する必要があります。
Q3:事業家集団はマルチ商法ですか?
A3:公式側は特定商取引法上の連鎖販売取引には該当しないと主張しています。一方、2022年の報道では専門家が脱法マルチの可能性を指摘しました。実際の契約や報酬構造を4つの法的要件に照らして判断する必要があります。
Q4:事業家集団の費用は月15万円ですか?
A4:月15万円という金額は、2022年の報道で元メンバーが証言した商品購入額です。2026年現在の全メンバーに共通する公式料金ではありません。公式FAQでは、活動内容によって費用が発生する場合があり、一律ではないと説明されています。
Q5:事業家集団では共同生活が必須なのでしょうか?
A5:2022年のTBS報道では、元メンバーが師匠からシェアハウスへの転居を勧められたと証言しています。一方、公式側は共同生活の強制や監視があるとの指摘を否定しています。全員に共同生活が義務付けられていると確認できる情報はありません。
Q6:事業家集団は2026年現在も活動していますか?
A6:はい。2026年11月2日時点で公式サイトには、セミナーやメディア発信、事業活動に関する情報が掲載されています。ただし、過去に報道されたチームの現在の構成や会員数については、公式に確認できる統一的な数字は把握できません。
Q7:勧誘された場合はどう対応すればよいですか?
A7:その場で連絡先や契約を進める必要はありません。運営者、勧誘目的、費用、商品購入の条件、紹介報酬、解約条件を確認し、契約書を持ち帰って検討しましょう。不安や金銭トラブルがあれば消費者ホットライン188に相談できます。
事業家集団をめぐる問題は、単に「怪しい団体なのか」「マルチ商法なのか」という二択では理解できない。
2022年のTBS NEWS DIGと関西テレビの調査報道では、街中や交流イベントでの勧誘、師匠と弟子の関係、毎月15万円の商品購入、借金、共同生活などが元メンバーの証言とともに紹介された。これらは、参加者の生活や経済状況に影響を与える可能性がある問題として注目された。
一方、事業家集団の公式側は2025年12月に声明を発表し、マルチ商法との認定や強制的な販売、共同生活の監視などの指摘を否定した。2026年には公式サイトでセミナー、交流会、事業活動などの情報発信を続けている。
両者の主張を比較すると、今後も注目すべき要点は明確だ。
事業を学ぶことや、同じ目標を持つ仲間と出会うこと自体は価値のある活動だ。しかし、自己成長や成功という言葉が、無理な支出や勧誘を正当化する理由になってはならない。
本当に価値のあるビジネス環境であれば、費用や契約を明確に説明し、参加者が自分の意思で判断できるはずだ。事業家集団に限らず、どのようなコミュニティに参加するときも、成功者の言葉や仲間意識だけで判断せず、具体的な事業内容と経済的な仕組みを見極めることが、自分の将来を守ることにつながる。