将棋中継を見ていると、夕方になるころに棋士が別室へ移動し、紙に何かを書いて封筒に入れる場面が登場します。これは「封じ手(ふうじて)」と呼ばれる、2日間にわたる将棋の対局で採用される特別な制度です。手番の棋士が翌日に指す予定の一手を専用の用紙に記入して封印し、立会人に預けることで、対局を翌日に持ち越します。
封じ手は、単に次の一手を秘密にするための儀式ではありません。対局が一晩中断されることによって生じる時間的な不公平を防ぎ、両者が同じ条件で勝負を続けられるようにする仕組みです。2026年の名人戦や竜王戦でも、その手続きはタイトル戦の見どころの一つになっています。誰が封じ手を書くのか、どのように記入するのか、翌朝は誰が開封するのかまで、仕組みを順番に整理します。
【基本知識】封じ手とは?通常の指し手との違いをわかりやすく解説

封じ手とは、将棋や囲碁などの対局を翌日以降に持ち越す際、次に着手する側がその手を用紙に記入し、封をして保管する方法です。
将棋の場合、2日制のタイトル戦で1日目の対局を終了するときに行われます。次に指す棋士が自分の着手をあらかじめ決め、相手に見えないように記録しておくのが特徴です。
例えば、1日目の最後に先手の手番が回ってきたとします。この場合、先手の棋士が翌日に指す予定の手を封じ手として記録します。翌朝になったら、その用紙を開封し、記録された手を盤上に再現して対局を再開します。
重要なのは、封じ手をした時点で次の一手が確定することです。翌朝になってから別の手に変更することはできません。
通常の指し手と封じ手は何が違う?通常の指し手は、棋士が考えた手をその場で盤上に指し、相手に公開するものです。一方、封じ手は、次に指す手を紙に記録し、一定期間秘密にしておく点が異なります。
両者の違いを整理すると、次のようになります。
- 通常の指し手:盤上に駒を動かし、その場で相手に着手を見せる。
- 封じ手:次の一手を専用用紙に記録し、封筒に入れて翌日まで保管する。
- 対局再開時:封筒を開け、記録された手を盤上に再現する。
つまり、封じ手は通常の着手をなくす制度ではありません。対局の中断中も次の一手が変わらないようにするための、特別な記録・保管手続きです。
封じ手は将棋だけの制度ではない封じ手という言葉は将棋だけで使われるわけではありません。囲碁でも、対局を中断するときに次の着手を記録して封印する仕組みがあります。
共通しているのは、対局を一時的に止めても、次に何をするかという情報を公平に管理することです。長時間にわたる勝負を翌日に引き継ぐための工夫といえます。
【採用される理由】封じ手はなぜ必要?2日制タイトル戦との関係
最大の目的は対局者の公平性を守ること封じ手が必要になる最大の理由は、対局が中断している間の思考時間に差が生まれるのを防ぐためです。
仮に封じ手がなかった場合、1日目の終了時に手番の棋士が盤上に一手を指してしまうと、相手は翌朝までその手を見ながら対応を考えられます。反対に、手番の棋士が着手を保留したまま対局を終了すれば、今度はその棋士だけが次の一手を考え続けられることになります。
どちらの場合も、対局の中断によって一方が有利になりかねません。
そこで、次の一手を封じておくことで、対局を中断する時点で双方の条件をそろえます。封じ手は、長時間の勝負における公平性を維持するための制度なのです。
封じ手が採用される主な2日制タイトル戦日本将棋連盟のプロ棋戦情報では、竜王戦・名人戦・王位戦・王将戦が2日制のタイトル戦として案内されています。これらは1局に長い持ち時間を設け、2日間をかけて勝負する形式です。
2026年時点で公表されている各棋戦の基本的な持ち時間と対局日数は、次のとおりです。
- 竜王戦:各8時間・2日制
- 名人戦:各9時間・2日制
- 王位戦:各8時間・2日制
- 王将戦:各8時間・2日制
一方、王座戦や棋王戦、棋聖戦などには1日制のタイトル戦があります。対局を翌日に持ち越す必要がないため、通常の形式では封じ手を行いません。
なお、対局形式や持ち時間は棋戦の規定によって変更される場合があります。実際の観戦では、その期の公式案内を確認することが大切です。
将棋の対局は1日目と2日目でどう進む?2日制のタイトル戦では、一般的に初日の午前9時ごろに対局が始まり、昼食休憩などを挟みながら夕方まで指し進めます。
その後、規定された封じ手時刻を迎えた段階で、手番の棋士が次の一手を封じます。封じ手の手続きが終わると1日目の対局は終了です。
2日目は、朝に両対局者が対局室へ戻り、前日の棋譜を再現した後、封じ手を開封します。記録された一手を盤上に指すことで、対局が再開されます。
つまり、封じ手は単なる休憩の合図ではなく、1日目と2日目をつなぐ公式な手続きです。
【実践解説】封じ手のやり方・書き方と関係者の役割
封じ手はどのように書く?具体的な手順封じ手には、通常の棋譜とは異なる専用の用紙が使われます。用紙には現在の盤面が記されており、次に動かす駒と移動先を示す形式が一般的です。
日本将棋連盟の王位戦中継ブログでも、記録係が局面図を用意し、封じる棋士が赤ペンで指し手を示す手続きが紹介されています。
基本的な流れは次のとおりです。
- 局面図の準備:記録係が現在の盤面を専用の用紙に記録する。
- 別室への移動:手番の棋士が相手に内容を知られないよう、指定された別室へ移動する。
- 指し手の記入:赤ペンなどを使い、動かす駒と移動先を図面に示す。
- 2通の作成:同じ内容の封じ手用紙を2通用意する。
- 封筒への封入:用紙を専用封筒に入れて封をする。
- 署名と受け渡し:対局者や関係者が所定の確認・署名を行い、立会人に預ける。
駒を盤上から動かす場合は、元の位置にある駒と移動先を矢印などで示します。持ち駒を使う場合は、持ち駒の種類と打つ位置が分かるように記入します。
このため、封じ手は単に「次は銀を動かす」と文章で書くものではありません。誰が見ても同じ着手を再現できるよう、盤面と指し手を対応させて記録します。
封じ手はどちらが書く?封じ手を書くのは、決められた終了時刻に手番となっている棋士です。
先手・後手のどちらが担当するかは、対局の進行によって変わります。タイトル保持者が必ず書くわけでも、挑戦者が必ず書くわけでもありません。
例えば、封じ手の時点で先手の手番なら先手が担当し、後手の手番なら後手が担当します。
つまり、封じ手を担当する棋士は、対局前に固定されているのではなく、1日目の最後にどちらの手番が回ってきているかによって決まるのです。
封じ手に関係する人物と道具の役割封じ手は対局者だけで完結する手続きではありません。正確な記録と保管を実現するために、立会人や記録係、対局場の関係者も関わります。
| 関係者・道具 | 主な役割 | 封じ手との関係 |
|---|---|---|
| 手番の棋士 | 次の一手を決定する | 専用用紙に指し手を記入して封じる |
| 対局相手 | 対局のもう一方の当事者 | 封筒への署名などを通じて手続きに立ち会う |
| 立会人 | 対局の進行と公平性を管理する | 封じ手を受け取り、保管し、翌朝開封する |
| 副立会人 | 立会人を補佐する | 封じ手の確認や手続きの補助を行う |
| 記録係 | 棋譜や対局の進行を記録する | 封じ手用紙に現在の局面図を準備する |
| 対局場の関係者 | 会場運営や保管管理を担当する | 封じ手の保管場所を提供する |
| 封じ手用紙・封筒 | 指し手を記録して保護する | 翌日まで次の一手を秘密に保つ |
特に重要なのが立会人の存在です。立会人は、単に封筒を預かるだけではありません。封じ手の手続きが適切に行われるよう確認し、翌日の開封と対局再開を進行させる役割を担います。
封じ手は同じ内容のものを2通作成するのが一般的です。日本将棋連盟の王位戦中継では、立会人と対局場がそれぞれ保管する様子が紹介されています。保管を分けることで、翌日の開封までの管理を確実にします。
【翌朝の流れ】封じ手の開封タイミングと再開の仕組み
封じ手はいつ開封される?封じ手は、原則として2日目の対局再開前に開封されます。
多くの2日制タイトル戦では、午前9時ごろに対局が再開されるため、その直前に開封の手続きが行われます。ただし、封じ手時刻と同様、具体的な進行時間は棋戦や対局の運営によって異なります。
開封の際には、まず両対局者が1日目の棋譜を盤上に再現し、封じ手を行った時点の局面まで戻します。
その後、立会人が保管していた封筒を開き、中に入っている用紙を確認します。記載された指し手を読み上げ、対局者に示したうえで、封じた棋士がその手を盤上に指します。
こうして、1日目の続きから正式に対局が再開されるのです。
封じ手の開封は誰が行う?封じ手を開封するのは、基本的に立会人を務める棋士です。
立会人は、封筒が適切に保管されていたことを確認し、開封後に記録された指し手を読み上げます。必要に応じて用紙を両対局者や関係者に示し、盤上の局面と記録内容に食い違いがないように進めます。
封じた棋士本人が、開封した瞬間に自由に手を選び直すわけではありません。前日に記入した内容を、そのまま着手することになります。
封筒の開け方にも決まりがある?封じ手の開封では、立会人がハサミを使って封筒を開く場面がよく見られます。ただし、ハサミの入れ方や封筒の切り方まで、すべて統一された形式になっているわけではありません。
2026年4月26日の第84期名人戦七番勝負第2局では、立会人の行方尚史九段が、封筒にハサミを入れた後に手でちぎるという開封方法を見せ、話題になりました。開封方法そのものには明確な統一ルールがないことも報じられています。
注目すべきなのは、封筒をどのように開けるかではなく、封印されていた指し手が正しく確認され、対局再開につながることです。
【勝負の駆け引き】封じ手と持ち時間の関係・予想の楽しみ方
封じ手の時刻を過ぎても考えられる?封じ手の時刻は、必ずしもその瞬間に対局者の思考が強制終了するという意味ではありません。
例えば、午後6時が封じ手の予定時刻だったとしても、手番の棋士がすぐに次の一手を決められなければ、持ち時間を使って考え続けることがあります。
日本将棋連盟の王将戦中継ブログでは、2025年3月8日の第74期王将戦七番勝負第5局で、藤井聡太王将が18時を過ぎても考慮を続け、自分の持ち時間が許す範囲で封じ手を決められると説明されています。
実際に同局では18時5分に封じ手が行われました。また、2025年1月25日の王将戦では、藤井王将が18時27分まで考えて封じ手の意思を示しています。
つまり、封じ手の予定時刻と、実際に封じ手を完成させる時刻は必ずしも一致しません。
封じ手を考えている間も持ち時間は減る封じ手を決めるまでに使った時間は、担当する棋士自身の持ち時間から差し引かれます。
例えば、18時を過ぎてから10分間考えて封じ手をした場合、その間の考慮時間は自分の持ち時間を消費します。翌朝になってから、その10分間が帳消しになるわけではありません。
一方、封じ手を終えて対局が中断している夜間は、通常の対局時計による考慮時間が進み続けるわけではありません。
この仕組みによって、封じ手を担当する棋士が長く考え続ける場合にも、相手との時間的な公平性を保つことができます。
封じ手には心理的な駆け引きもある封じ手は、単に事務的な作業として行われるわけではありません。いつ封じるかという判断も、対局の一部です。
手番の棋士は、次の一手を決めた段階で封じることができます。しかし、難しい局面であれば、もう少し考えてから決断する選択肢もあります。
特に候補手が複数ある局面では、どの手を選ぶかだけでなく、どの段階で決断するかも悩ましい問題になります。
また、封じ手を担当する棋士が考えている間、相手は次の一手を知らないまま待つことになります。そのため、封じ手のタイミングは、観戦者だけでなく対局相手にとっても気になる瞬間です。
封じ手予想とは?ファンや解説者が注目する理由封じ手予想とは、1日目の対局が終了する前に、翌日公開される予定の指し手を予測する楽しみ方です。
将棋ファンや解説者は、現在の盤面、駒の配置、双方の攻めや守りの方針、考えられる候補手などをもとに予想します。
例えば、攻めを継続する手が有力なのか、いったん守りを固める手が自然なのか、複数の候補を比較しながら考えます。
名人戦棋譜速報では、第84期名人戦七番勝負に関連して封じ手予想の企画も実施されました。応募期間は1日目の封じ手後から2日目の対局開始前までとされ、的中者を対象に賞品が用意されていました。
封じ手の内容が公開されていない時間帯だからこそ、棋士の考えを想像しながら翌朝を待つ楽しみが生まれます。
封じ手をした側が有利になるとは限らない封じ手を担当した棋士は、翌日の着手を先に決めておかなければなりません。そのため、相手より有利になる制度と考えるのは正確ではありません。
封じ手をする側は次の一手を固定する一方、相手も翌朝に初めてその手を確認することになります。どちらか一方だけが夜間に相手の次の着手を見ながら研究できる状態を避けているのです。
また、封じ手を担当する側がその時点で優勢とは限りません。勝勢でも劣勢でも、終了時刻に手番が回っていれば担当する可能性があります。
封じ手をした棋士の名前だけで勝敗を予想するのではなく、盤上の形勢や候補手、残り時間を合わせて見ることが大切です。
【歴史と2026年の実例】封じ手の由来は?阪田三吉から現代のタイトル戦へ
現在の方式につながる1937年の天龍寺の決戦封じ手の歴史をたどるうえで重要なのが、1937年(昭和12年)3月に京都の天龍寺で行われた阪田三吉と花田長太郎八段の対局です。
日本将棋連盟の公式歴史資料によると、この対局は3月22日から28日までの1週間にわたって行われ、持ち時間は双方30時間という非常に長いものでした。
この対局以前の阪田三吉と木村義雄八段の対局では、封じ手を一日ずつ交互に担当する方式が採用されていました。
しかし、長時間対局ではその日の終了時刻が一定しないという問題がありました。そこで天龍寺の対局では、終了予定時刻に手番となっている棋士が封じ手を担当する方式に変更されました。
加えて、封筒を対局者双方が封印する方法も取り入れられました。日本将棋連盟の歴史資料では、これらの変更は阪田三吉の提案によるものと説明されています。
現在のタイトル戦で採用されている封じ手の基本的な考え方には、こうした長時間対局の経験が受け継がれているのです。
2026年10月の竜王戦でも封じ手の作法が話題に現代の封じ手がどのように行われているかを示す事例が、2026年10月9日に始まった第39期竜王戦七番勝負第1局です。
藤井聡太竜王に服部慎一郎七段が挑戦したこの対局では、服部七段にとって2日制タイトル戦は初めての経験でした。
1日目の午後6時、手番となった服部七段が44手目を封じ、対局は翌10日の午前9時に再開されました。
この際、立会人を務めた森内俊之九段が、封じ手を書く場所や封筒への署名などの手順を服部七段に直接説明する場面がありました。
封じ手は長年続く伝統的な制度ですが、初めて経験する棋士にとっては、専用用紙の扱いや封印の手順など、覚えるべき作法もあります。2026年の竜王戦は、盤上の勝負だけでなく、こうした伝統の継承という側面も伝える対局となりました。
封じ手は記念品としての価値を持つこともある封じ手は、単なる対局上の記録にとどまりません。実際に棋士が記入した用紙や封筒には、その対局の記録としての価値があります。
象徴的な事例が、2020年の第61期王位戦です。藤井聡太棋聖(当時)が最年少で王位を獲得したシリーズでは、封じ手用紙が災害復興支援のチャリティーオークションに出品されました。
神戸新聞の報道によると、藤井二冠(当時)が封じた第2局・第4局などの用紙が出品され、入札価格は大きく上昇しました。第4局の品は、報道時点で約1020万円の価格が示されていました。
この企画では、通常の2通に加えてチャリティー用の1通を作成するという特別な対応も行われました。
もちろん、すべての封じ手がオークションに出されるわけではありません。基本的には対局を管理するための記録ですが、歴史的な対局や特別な企画では、将棋文化を象徴する資料としての側面も持つのです。
【プロの結論】封じ手を見るときに押さえたい要点
封じ手を理解するための3つの判断基準封じ手を観戦するときは、次の3点を意識すると、対局の進行や棋士の判断をより深く理解できます。
1. 誰が手番なのかを確認する
封じ手を担当するのは、決められた終了時刻に手番となっている棋士です。タイトル保持者か挑戦者かという立場では決まりません。まず盤面の手番を確認することで、誰が封じるのかが分かります。
2. 封じ手時点の形勢と残り時間を見る
封じ手をした棋士が優勢なのか、難しい局面で考慮を続けているのかを確認します。持ち時間が少ない場合と余裕がある場合では、封じ手を決めるまでの判断も異なります。
3. 翌朝の開封後に実際の着手を確認する
封じ手予想が当たったかどうかだけでなく、実際に選ばれた手がその後の展開にどう影響するかを見ることが重要です。局面の評価は、次の一手だけでなく、その後の双方の応手によっても変化します。
封じ手に関するよくある誤解- 誤解1:封じ手はタイトル保持者が書く。
正しくは、終了時刻に手番となっている棋士が書きます。 - 誤解2:午後6時になった瞬間に必ず対局が終わる。
封じ手の予定時刻を過ぎても、自分の持ち時間を使って考え続けることがあります。 - 誤解3:封じ手は翌朝に変更できる。
封印した時点で指し手は確定しており、自由に変更できません。 - 誤解4:封じ手をした棋士が有利になる。
封じ手は両者の公平性を守る制度であり、担当した側の勝利を保証するものではありません。 - 誤解5:封筒の開封方法にも厳格な統一ルールがある。
ハサミの使い方などの演出には違いがあり、開封の仕方そのものが勝負の規定というわけではありません。
封じ手の本質は、翌日の一手を秘密にすることだけではなく、長時間に及ぶ対局を公平な条件で継続させることにあります。盤上の戦術と同時に、持ち時間や手番、立会人の手続きを見ることで、タイトル戦の楽しみ方はさらに広がります。
封じ手とは?に関するよくある質問(FAQ)
Q1:封じ手は必ず午後6時に行われますか?
A1:必ず午後6時とは限りません。棋戦によって封じ手の予定時刻が異なり、名人戦では18時30分と案内される場合もあります。また、予定時刻を過ぎても手番の棋士が持ち時間を使って考え続けることがあります。
Q2:封じ手は先手と後手のどちらが書きますか?
A2:決められた終了時刻に手番となっている側が書きます。先手が必ず担当するわけではなく、対局の進行状況によって先手にも後手にもなります。
Q3:封じ手はなぜ2通作るのですか?
A3:封じ手を確実に管理するためです。一般的には立会人と対局場がそれぞれ1通を保管し、翌日の開封まで適切に管理します。
Q4:封じ手を書いている間、相手の棋士は何をしていますか?
A4:相手は封じ手の内容が見えないように待機します。次の一手を知らない状態を保つことで、夜間の思考に関する不公平を防ぎます。
Q5:封じ手は翌朝、誰が開封しますか?
A5:基本的には立会人が開封します。記録された指し手を読み上げ、局面を確認してから、封じた棋士がその手を盤上に指して対局を再開します。
Q6:封じ手の内容は対局相手にも秘密なのですか?
A6:はい。封じ手を記入する際は別室を使い、相手に内容が分からないようにします。翌日の開封まで、指し手は公開されません。
Q7:封じ手の予想が当たると何か特典がありますか?
A7:棋戦によっては、公式の封じ手予想企画が実施されることがあります。第84期名人戦七番勝負でも予想企画が設けられ、的中者を対象に賞品が用意されました。ただし、常に実施される制度ではありません。
封じ手とは、2日制の将棋で1日目の終了時に手番の棋士が次の一手を記録し、封印して保管する制度です。翌朝に立会人が開封し、その指し手を盤上に再現することで対局が続けられます。
この制度の最大の目的は、対局が一晩中断することによって生じる思考時間の不公平を防ぐことです。誰が封じるかは手番によって決まり、記入中の持ち時間や封じるタイミングも勝負の一部になります。
1937年の阪田三吉と花田長太郎の天龍寺の対局で整えられた方式が、現代のタイトル戦にも受け継がれています。2026年の名人戦や竜王戦でも、封じ手は対局を支える重要な手続きとして続いています。
次に将棋の2日制タイトル戦を観戦するときは、封じ手を単なる終了の合図として見るのではなく、担当する棋士、残りの持ち時間、封じた局面、翌朝の開封後の一手に注目してみてください。棋士がどのような構想を描き、どんな決断を下したのかが見えてくるはずです。